「散るぞ悲しき」同様硫黄島での戦いを描いた本であるが、こちらは司令官ではなく生き残った兵士の証言を元に構成されている。少ない火力、欠乏している水や食料、過酷な環境の中で如何にして戦い抜いたか書かれている。
<br /> 多くの戦場では、追い詰められて、いよいよ投降か自決(玉砕)と言う状況では、武士道精神、軍規、多くの仲間が苦しみ死んでいること、などから投降することは恥ずかしい事で、兵士たちは自決をしたいと考えていた。本書でもそういう気持ちがよく伝わってくる。しかしながら、硫黄島の戦闘は、なるべく占領を遅らせる事が目的であるため、玉砕は許されておらず、一人になってっも生きて戦うように命令されていた。従って、武器もなく、食料もなく、追い詰められ退路もなく、生きることで精一杯の状況でも投降も自決も許されず戦い続けた。何が何でも戦い抜くこうとした日本兵の魂が伝わってくる。
<br /> 細かい内容は書きませんが、前線の兵士たちの証言は壮絶で描写的で生々しい。現代の困難は殆どままごとの様に思えてしまうほどである。彼らを思えば、どんな困難にも立ち向かえそうな気になる。
硫黄島の闘いに身を挺した人たちは、
<br />今のボクには理解も及ばない、
<br />想像もし尽くせない極限状況にいた
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<br />極限を越えた巨大で逃げ場のない現実に
<br />生身で立ち向かわざるを得なかった男たちは
<br />あの地獄の中でも確かに生き、
<br />やがて銃弾と火炎に倒れていった…
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<br />1200キロ離れた故国に待つ
<br />家族のことを想いながら生き、亡くなっていった
<br />硫黄島に眠る人たちに、今初めて想いを向け、
<br />一読者として敬意を捧げます。
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硫黄島の戦いは、文字通り地獄絵だった。
<br />著者は、この戦いにおいて、誰よりも兵隊ひとりひとりが敢闘したことをよく理解して書いている。
<br />そのことに共感を得て、私も読み進めることができた。
<br />小説という形式を借りて、硫黄島の悲惨な戦いをきちんと記録した本だと思う。
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