巻頭に「勇気の手本であり、希望の象徴であるクリストファー・リーヴに捧ぐ」とあります。
<br />本作で犯人のターゲットになる少女ジェニーヴァと、その祖先である解放奴隷チャールズを通して作者が描きたかったのは、人の持つ誇りというものの大切さではないでしょうか。主人公ライムと同様の身体的境遇にあったリーヴ氏の生き様というものを思えば、これは確かに彼に捧げられるべき物語であると思いました。ラストに起こる「小さな奇跡」も非常に印象深く、個人的にはシリーズの中でも特に心に残る作品になりました。
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<br />シリーズの邦訳ももう6作目になりますが、マンネリに陥ることなくレベルの高い語り口で読者を引っ張る作者の力量は相当なものです。あと、池田真紀子氏の訳はいつものことながらまさに職人芸というべき素晴らしさで、場面が眼前に立ち上がってくるようでした。
2006年9月30日リリース。リンカーン・ライム・シリーズの第6作。実はジェフリー・ディーヴァーは既に第7作にあたる『The Cold Moon』を刊行済みではある。
相変わらずのリンカーン・ライムである。この辺はディ−ヴァーの長編を読破した人でないとわかり辛いが何しろ不変なのである。ガスクロマトグラフィでお菓子を検出してしまうところが既にリンカーン・ライムだ。犯人の手製の弾丸から銃の素性をあっさり分析するアメリアもアメリアで相変わらずである。(>_<)
着々とディーヴァーの仕掛けた連続トラップが炸裂し、ジェット・コースターな語り口に時を忘れてしまう出来映えなのだが、本作は特にラストがスゴイ。そして最後の章のライムとアメリアの会話に不覚にも涙しそうになった。
パーカー・キンケイドまで登場する本作。外せない大傑作と言い切らせていただきます。
前二作(「石の猿」、「魔術師」)で大いに篩いにかけられたライムシリーズファン。ここまで付いてきた人には十分面白い作品だが、
<br />既に見切った人達から見れば「またかよ!」という感じのマンネリな展開。どんでん返しもやり過ぎです。が、マンネリとはいえ面白かった。
<br />ストーリーとは別に一つ気になったのがライムの肌の色。
<br />映画の刷り込みなのか単なる記憶違いなのか、ずっとアフリカンアメリカンだと思って読んできたんだけれど、違うような記述があり衝撃を受けました。