タイトルで非常に興味をそそられました。原題はただの「improbable(ありそうもない)」ということで、うまい邦題の付け方だと思いました。帯やカバーの記述も絶賛の嵐で、これはやはり手に取っちゃいますね。
<br />のっけから数学的なトリビアが散りばめられており面白いことは面白いのですが、本筋に深くからんでくるようなものではないことが読み進むうちにわかってきます。また、登場人物は皆あまり深みが無く、悪い意味で漫画的な印象を受けました。アクション場面や終盤、物語が収束してくるあたりはかなり読ませますが、途中の伏線の張り方がややぎくしゃくしており、トータル的な小説の完成度はそれほど高くないように感じられました。クライトンらと比較されることが多いようですが、(あとがきにも同様のことが少し書いてありましたが)個人的にはM・ナイト・シャマランの映画から受ける印象に近い読後感を持ちました。
<br />結論としては、平均的な水準の作品という評価になります。途中で投げ出すことはまず無いでしょうし、それなりの満足感を得られる方が多いとは思いますが、「ハードカバー2冊、高かったな・・・」とお感じになる方も結構いらっしゃる気がします。
展開が早いのか、巻き戻ってるのか、混乱してくるこの下巻。
<br />対戦相手が駒を動かす前に、向こうの手を見抜いておいて、自分の駒を10個失っても勝つチャンスがあるチェスのようなこの物語の展開は、読むのを止められない。
<br />途中からの展開は、時間を忘れさせるほどだ。
<br />主人公ケインだけが先を見越して動いた断片だけを先に見せておき、その意味が後に分かるのも癖になる面白さ。見事な白熱するゲームを見たみたいな燃焼感一杯の下巻。
<br />この本は上巻より、下巻が圧倒的にお薦めなんですよ。
ある意味、「ダヴィンチコード」の様な知性を刺激する娯楽作品。SF的な話が4割、6割はスピーディーなアクション。主人公の「能力」は、漫画JOJOの奇妙な冒険に通ずる特異な能力だが、その能力の見せ方がなかなか良い。その能力が万能ではなく二転三転するストーリーも飽きずに読めるポイントである。読んで損はないだろう。同氏の他作の翻訳も期待している。