通訳もこなし翻訳家であり、名エッセイストでもある米原さんの書評は、物事の本質を的確に見抜く。
<br /> 読書量の多さにも驚かされるが、まさに博覧強記。森羅万象、あらゆる分野に博識で、しかも奥深い。
<br /> また、上っ面だけのメディアの言説に乗らず、あくまでグローバルな視点に立って、ズバズバと現在の世相や政治を切って行く。読んでいて気持ちがいいこともあれば、ハッとさせられることも多い。
<br /> この本には、書評の他に、彼女自身の癌との闘病記も載っていて、自身の体験から読者に伝えたかったことや、患者側から見た医療の不満も載っている。
<br /> 彼女の癌との苦しい戦い、心の叫びが聞こえてくる。今、生きていられることに感謝と勇気を与えてくれた。
<br /> 本当に亡くなられたことが惜しまれる。是非ご一読を。
タイトルは大風呂敷でワクワクする筈ですがこれで遺稿となれば言葉も出ません。<br />最初から読み進めてもいいし気紛れに捲ったページから読んでもいい。<br />一気に読むより毎日少しずつ読む方がいい。通勤時でも休み時間でも寝しなでもいいけれどこの本を読むために時間を割きたい。<br />最初で最後の書評集は闘病記が収められています。いつもの彼女であるし、そうでないような気がしてしまうのは読み手のせいだけではないはずです。
ロシア語通訳の第一人者にして、大傑作小説『オリガ・モリソヴナの反語法』、最高のノンフィクション『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』、大爆笑エッセイ『ロシアは今日も荒れ模様』などの書き手、米原万里が06年5月に亡くなった。本書は米原の遺作ということになるのだろうか。
<br />とにかく書評家としても鹿島茂や山内昌之に比肩する最強・最高の手練である。95年から05年までの全書評を収めた本書は、誠に嬉しい贈り物のようなものだ。
<br />取り上げられた本は全部読みたくなる。そして、1冊の本についての文章からこちらの思考が促されるのだ。なんという強靭でしなやかな文章であることか。これでしばらくは本書に紹介された数々の書物を買いまくることになるであろう。読書界は、この人をもって最高の導き手としてきたのである。
<br />それにしても、あまりに早い逝去は痛恨の極みだ。合掌。