新聞を日常的に読む普通の大人であればぜひとも読んでおくべき必読書であると感じました。
<br />もっともらしい数字で飾られた嘘っぱちの社会調査の記事がいかに多いかが、
<br />素人や入門者でも非常に読みやすく、分かりやすく解説されています。
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<br />様々なウソのパターンが万遍なく紹介されているので一回さらっと読んだだけではそれを見破る力が十分に身に付くとは思いませんが、
<br />少なくとも記事のデータを鵜呑みにすることなく「これは怪しいのでは?」と疑う姿勢を身に付けることはできるようになるはずです。
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<br />この本を読む前でも「これは変だ」と感じる社会調査の記事はたまにありましたが
<br />他にも普通に読み流して信じていた嘘っぱちの記事、あるいは説明が不十分で社会調査の体を成していない記事が如何に多かったかが実際に確認できました。
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<br />本書を読んだ後では新聞の見方が変わることは間違いないと思います。
もっともらしい社会調査の見極め能力テストが、3問載っている。広くは真実を知ろうとする能力やリサーチが正しいといえるかを見分けるリテラシーが、どの程度養えたかを試すことができる。本書を読む前と読んだ後でどれくらい変化したであろうか。
<br /> 社会調査あるいはサーベイといわれる測定結果をよく見かける。表やグラフとして提示してあることが多い。人の言うことを信ずるのは、それはそれで大事なことだ。しかし、人を惑わせてはいけない。
<br /> 自分がものを言うときはどうであろうか。(1)モデル構築、(2)リサーチ・デザイン、(3)プレゼンテーションに対し、疑問文を呈することができるだろうか。言うことは聞くことである。聞くということと見抜くということは、ひとつである。それは、真実を見る目こそが、虚心になることの根底にあるのではないか。読後に、そのような感慨を持った次第である。
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<br /> 「モデル構築」における相関と因果、社会科学における検証プロセスが演繹的であること、論理構成がアプリオリにできていなければならないこと、「リサーチ・デザイン」における勝手な思いつきによるトレンドの偽装工作が発生されがちであること、これらについて詳しく実例の記事や放送をとりあげ、泥棒の始まりを明らかにしてくれる。だまされやすい方は、必読。
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<br />新書本なので、あまりおまけは期待できないが、参考文献あり。リサーチ・リテラシー訓練不足の読者向け紹介文献あり。索引なし。ひもなし。
新聞などで公表される数字を鵜呑みにしてはいけませんよ,間違った方法で調査されているかもしれませんし,あるいは,主催者側の欲しい結果を得るために計画された調査かもしれませんよという本です.カーター,レーガン,ニクソン,フォードの4人の元大統領の人気投票を行ったら,その結果はやる前からわかっているという話をつかみとして,どんどん引き込まれていき,一気に読むことができます.また,大手新聞の記事などをバッサ,バッサを斬っていく様は,「まあまあ抑えて」と言いたくなるくらい痛快で,ヘタな小説の何倍も楽しめます.
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<br />私の会社でも時々社内制度などに関するアンケートがあるのですが,どうも答えにくい質問が多かったり,ひょっとして誘導されているのではないかと思われるような質問があったりと気になっていました.最近はWebでこれをやらされますので,未回答ができないので一層始末に困ります.本書を読めば,なぜこのような質の悪いアンケートができあがるのかという疑問が一気に解けます.
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<br />また,本書は社会科学に関する本ですが,自然科学や工学に携わる人にも是非読んでもらいたい一冊です.例えば,対象としない変数はコントロールする必要があるという話は,小学生が理科の実験をするときに,「温度,光,水分,酸素の条件を変えて発芽の様子を観察しましょう.そのとき,2つの条件を同時に変えてはいけませんよ」というのと同じ話です.ただし,社会科学は人間が相手だけに,忘れたり,ウソをついたり,学習したりするところが難しいところのようですが,幸いにも自然科学にはそれはありませんね.
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<br />まずは,なにより本書は楽しく読めるというのが一番です.研究などに携わらない人でも知っておいて損はない内容ですし,本書を読むと新聞の読み方がきっと変わると思います.ただし,あまりのめり込むと意地悪な性格になってしまうかもしれませんが.
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