個人的に好きな作家である橘玲さんが書いた新書である。最初に「株式投資はギャンブルである」という言葉で度肝を抜かれるが、だからといって、株式投資がいけないと言っているわけではない。株式投資というゲームに参加するのであれば、証券会社の投資セミナーなどに参加して甘言に乗せられる前に、自身の金融リテラシーを高めて、きちんと投資のリスクと中間搾取されるコストなどゲームのルールを認識した上で参加すべきというのが全体としてのメッセージ。もちろん、この本の中でもファイナンス理論のほんの触りの部分などが分かりやすく解説されているので、一読することによってゲームの基本的なルールは習得できるようになっている。「3ヶ月で○億円儲けた」的な安易な書籍が氾濫する中、このような正統派の本の存在は希少であり、ぜひ株式投資初心者に読んでもらいたい一冊。
最近株や投資について書かれた本は、投資をしないものは負け犬であり、投資をするのが当然、という感じで書かれている。
<br /> 本書は株について書かれてはいるが、むしろそのリスクを強調して書かれている。すなわち、投資はギャンブルであり、むしろ負けることが多い(著者によると、70%以上の人が負けることとなるという)。その他、銀行や保険の各種商品のリスク(これは触れるくらいであり、もう少し書いて欲しかった)も強調され、猫も杓子も投資、という最近の風潮に警鐘を鳴らしている。まさしく、リスク無しの投資による儲けを考える人は「頭蓋骨に脳みそが入っているの?」というわけだ。
<br /> 株などのリスクを知り、頭を冷やすのにはいい本であると思う。(断っておくが、著者は投資を否定しているわけではない)
『ウォール街のランダムウォーカー』では、バフェット流の投資術はほとんど言及されていませんでした。で個人的にはインデックスと、バフェットのどちらに軍配を上げてよいのか決めかねていた。
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<br />本書は、インデックス派もバフェット流もどちらも「資本主義の本質」にのっとった投資法であり、効果的だと述べます。ここまで明確に両者を位置づけた本は、いままでなかったように思います。新書でここまですっきりとした見通図を描いてもらえてうれしいです。
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<br />時間が取れればファイナンス理論の歴史を、勉強してみたくなりました。
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<br />さらに「効率的市場理論」と「ランダムウォーク」の関係ですが、前者が前提となって、後者が成立するということで、これまたすっきりといたしました。すると前者が成立しなければ、後者も成立しない可能性があるということなんですね・・・。
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<br />橘さんのどこか斜めに構えたところがある文体も気に入っています。同じ早稲田のにおいを感じなくもないです。
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<br />「ホンモノのお札ならば、すでに拾われているはず・・・」橘さんのオリジナルの話ではないですが、これはホントにそのとおりだと思いますね。このコトバはプロも個人投資家も常に念頭に置くべきものでしょうね。