安保条約、靖国参拝、安全保障、教育問題について、安部首相は過去の「進歩的知識人」の発言をそのまま引用しながら、その不明さを問う。首相まで上り詰めた政治家が自分の言葉でここまで他者への批判を前面に出すことは異例とも言えるし、彼らの罪はそれだけ深いと言える。自分の言葉で書いている箇所について、組織的な批判が書き連ねられると言うのは、彼らの弱点を的確に攻撃したからこそであり、日本人が戦後一貫して受けた洗脳のツボを突けたからこそであると思う。
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<br />しかしながら、経済や年金については、記述が浅く、首相御自身の言葉があまり出てこない。ここは、明らかに厚生労働省の資料や試算をなぞっている。数字については厚労省資料のグラフや表を示せば済むのだから、「言葉」をもうちょっと聞かせて欲しかった。星一つの減点は、このためである。
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<br />それから、これは減点対象としなかったが、進歩的知識人のトンデモ発言の引用文献を示して欲しかった。おそらく、これは首相の優しさなのだろう。ギリギリのところで、彼らを守ってあげているのだ。こんなバカな論理をごり押ししていた証拠が明らかになれば、彼らは二度と立ち上がれまい。首相は、敢えて根拠をぼかすことによって、彼らに自省を求め、立ち直るきっかけを与えたのだ。まさに「再チャレンジ」の精神。この深みが理解できない者に、日本の未来を語る資格はない。
第1章でリベラルという言葉と保守という言葉に於ける、欧米日の違いを指摘しているところからはじまる。
<br /> これは多くの学者ですら最近混雑して用いており、その部分は熟読せねばならないだろう。
<br /> 日本人の知識人にとってリベラルな全体主義者というのはまだ想像できないものなのだし。
<br /> そもそも美しい国といっても戦後左翼にとってソビエト連邦や北朝鮮民主主義人民共和国が美しい国だったわけだ。
<br /> 実際マルクス主義的美学はこの国で畸形的な発展を遂げている。
<br /> 美意識でも正反対の評価を下す人がいてもなんらおかしくはないし、なにより戦後史学は英雄端を全て美しくないといって切り捨ててきたのだから。
<br /> すなわちある意味日本を主観的にみているわけで、北朝鮮や韓国、中国の主観で日本を見たい人には我慢がならないはずだ。
<br /> わかりやすく読め、そして論争を呼ぶ1冊である。
話題の本なので、とりあえず読もうと図書館で予約していた。
<br />2ヶ月ほど待ったその間、何度も買って読もうかと悩んだが待って正解。
<br />まず本はタイトルと内容がかみ合わないと興ざめもいいところ。
<br />最近の新書の悪い傾向だ。
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<br />それだけではない。
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<br />前半は批判がでてきそうな問題の擁護のために割かれているようなものだが、さらっと物事の表層をすくい上げて説明しているような希薄な印象を受ける。そこには個人の主張のようなものは感じられず、正しいと説明するのに都合の良い解釈を当て嵌めたかのようだ。
<br />後半の教育関連が個人の主張が最も現れている部分だが、語尾の言い回しが変わっただけで説得力のある濃い内容とはとてもいえない。この部分だけもっと詳しく書いて一冊の本にした方がまだ良かったのではないかと思うくらい。
<br />全体的に希薄なので、最後の締めを上手くまとめても効果なし。
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<br />あれだけ「美しい国づくり」と連呼している当の本人に、確固たるイメージがあるのかどうか、疑問を持たざるを得ない内容だった。