日露戦争は、官僚組織が硬直化しきってしまった帝政ロシアと、国家というものをはじめて持ち、生まれたばかりの国家を何とか守ろうと国民上げての防衛を図る弱小国日本の闘いである。<p>今から考えると、確かに勝ったが例えばやり直しがきくとして何度か再戦してみればそのことごとくで日本は負けたであろう。ロシアが敗戦の中に自らの腐敗ぶりに気付くことさえできれば。それほど実力の差はあった。逆に言えば、その実力の差を跳ね返してしまうほど、一致団結してまとまった国家は強いということも言えるし、官僚化して硬直しきってしまった国家というのは話にならないもろさを抱えるということが言えることもよくわかった。<p>これは、戦争に限らない。社会におけるあらゆる事象にあてはめることができる教訓であると思う。それほどまでに、ロシアの官僚化が如実に描写されている。むしろ日本の勝利の原因は日本にではなく、ロシアにこそあったのだということがよくよく見にしみた。<p>そこを差し引いても、あまりある旧日本男児の気概、生き様にはただただ畏敬の念を禁じえない。狂信的とも言える、信念の強さは凄まじい。この気概をもってすれば今の日本も一気に救われるものと確信する。<p>痛快なまでの古きよき日本の魂が堪能できる。
秋山好古率いる騎兵隊の奮戦に始まる第6巻は、明石元二郎という新たなキャラクターが登場し、スパイ小説のような舞台設定で革命前夜のロシアが語られる。歴史の表舞台には登場しない明石と言う人物はとぼけた風貌で大仕事をやってのけ、どことなく刑事コロンボを思わせる。著者は彼の業績を称えつつも、歴史の流れのなせる技として誉めすぎることなく伝えようとしている。<p>その後の章は、次のクライマックスに備える日本軍やバルチック艦隊の描写だが、軍楽隊の話や艦上の射撃訓練の様子など「余談」も盛りだくさんで、大変興味深く読んだ。
大好きな兄を11歳で失った曾祖母の気持ちを思う時、涙を無くして読む事ができませんでした。<p>生前、私に「あんたはいい時に生まれてきた。戦が無いけん」と曾祖母によく言われました。ロシアには勝ちましたが、その中で「一将功なりて万骨枯る」の惨憺たる状況の果ての勝利を「忘れるべきではありません。」曾祖母93歳、私が17歳のとき曾祖母は亡くなりました。<p>今の日本人は、日露戦争を過去の出来事、歴史の教科書の「紙切れの中」の話のように語ります。しかし、死んでいったのは、偶々私達より少しばかり生まれたばかりに死地へ赴いた「同じ日本人だ」ということを忘れてはならないと思います。決してそのことは忘れてはならないと。1904年2月10日開戦。100年前の出来事なのですが。<p>坂の上の雲の先に何があったのか?何を求めるべきだったのか?そして<br>今、今が幸せなのか?考えさせられる事ばかりです。明治の日本人と今の日本人とが同じ日本人とは思えません。