仲の良かった兄が強盗殺人を犯し、“強盗殺人犯の弟”というレッテルを背負いながら生きていく姿を描いた小説。兄は、弟と殺した人の親戚に手紙を書き続ける訳ですが、本人は罪滅ぼしのためと思って書いたつもりが、実は相手にとっては苦しみの材料となるというのは、極論すれば、親切と余計なお世話が紙一重という日常よくあることと五十歩百歩なのかなと思います。兄の非業のために弟がひどい人生を歩まざるを得ないというのは、人間は周りとの呪縛から離れられないものだというよりは、誰もが独力だけで人生切り開けるものではなく、人との係わり合いの中で生きていくもんだなということを思い知らされる内容でした。
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<br />読み終わっても後を曳く内容です。若い人にオススメの一冊でしょう。
一応読了したが,途中から少々飽きてきた。まず,主人公の兄が馬鹿すぎる。想像力がなく,自分の行動が他人にどのような影響を与えるかを分かっていない。また主人公も同情すべき点は多いが,自分でも少しはいろいろなことを調べるべきであろう。大学や高校を働きながら夜間や通信で卒業した人や,昼間の学校でも学費は自分で負担した人などは少々白けた感じで読むのではないだろうか。親の収入によっては旧国立大では学費免除などもあるし,奨学金,特待生などさまざまな手段がある。主人公らの立場は設定だとは思うが,少々底の浅い強引な設定に思えてしまった。
<br />経済的に大学進学をあきらめている人,意志があれば道はあります。頑張ってください。この小説を参考にしてはいけません。
読後、小説から本の帯に抜粋された言葉をあらためて読んだ。納得したくないのだけれど、納得せざる得ないのか?微妙な感覚に、いまだに頭を整理できずにいる。<br />すごい本を読んでしまった。学校の道徳のテキストや新聞掲載の小随筆などには絶対に出てこない現実を突き付けられて戸惑いを覚えながらも、頷きながら読むしかなかった。<br />殺人犯であり服役中の兄のため、主人公である弟が社会的に様々なものを失い、兄の犯罪が自分のためのものであった故にこそ、一層苦しみ、社会、そして兄を憎む姿は、切なく辛い。<br />しかし筆者は筆を緩めることなく、これでもか、これでもか、と主人公を苦しめ続けるのだ。<br />そして兄との完全な別離。<br />犯罪加害者の身内の真の痛み、苦しみとは、またその社会的な必然性とは何か。最後の場面はあまりにできすぎていた感は拭えないが、きれいごとではない現実を深くえぐった作品であった。<br />