本書を一読し、最初に頭に浮かんだフレーズが、「神は細部に宿り給う」だった。大所帯のオーケストラだが、彼らの演奏がステージに載り、聴衆が耳にするまで、たくさんの裏方さんたちが仕事をしている。見えない仕事といえど、細心の注意が必要とされる、ないがしろにすることができない仕事、また細かい、時間勝負の仕事だが、関わる人の仕事への思い入れ、心の傾け方が、成果品ににじみでてしまう仕事。こうした仕事に対する「職人さん」たちの思い入れが、手にとるように伝わってくる。仕事は心でするものなのだなあと、改めて思った。
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<br /> 職人さんの仕事もさることながら、本書で特に印象の残っているのが、文化メセナに関する一考。お金があればよいというものではない、要は文化を生活のなかにどのように消化し、血肉にしているかなのだとと気付かされた。
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2002年に出た単行本の文庫化。
<br /> もともと『週間金曜日』に連載された「裏方のおけいこ」をまとめたもの。『指揮のおけいこ』の続編にあたる。
<br /> クラシック業界の裏方の仕事を色々と取材したもので、非常に面白かった。楽器の運送屋さん、ピアノの調律師、写譜屋、チラシまきなど、なくてはならないけれど、普段は我々の目に触れない人たちが紹介されている。岩城氏が実際にインタビューを行い、なかには一日アルバイトとして同行したものとかもある。
<br /> 文章の魅力はやや落ちているようにも感じたが、題材が面白いので、おすすめ。
岩波新書に不得意な人には格好な文庫です。<br>オーケストラの裏側というか、普段は思いもよらないことが、指揮者(と言うよりも関係者)の視点から綴られています。メニューインがアメリカのオーケストラに好評な理由には、目から鱗が落ちました。