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| シリウスの道〈上〉
(
藤原 伊織
)
本書は藤原伊織氏の小説の中で、もっとも入り口の広い作品だ。全共闘って?蚊トンボが頭に入り込むって何?と思った人も、本書なら抵抗を感じないだろう。かつて藤原作品になじめなかった人、ピンとこなかった人に、ぜひとも読んでみていただきたい。
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<br />広告業界を舞台にした小説。大手広告代理店の副部長・辰村祐介のもとに、電機メーカーから新規事業(ネット証券)の競合案件が舞い込む。予算18億。それは彼が封印したはずの過去が呼び込んだ仕事だった・・・
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<br />藤原氏が電通社員だったことが存分に活かされた設定で、業界の内幕〜緊迫感漲る競争の苛烈さ、社内の軋轢などがたっぷりと読める。細部に至るまで書き込みつつも、スピード感を落とさず活写する手際はさすが。文章の味わい、会話のうまさ、人物の魅力はやはり突出している。現在と25年前の過去パートの書き分けも見事だ。
<br />人物にふれると、とびきり有能ながら組織からははみ出し、自分の魅力にまったく無頓着な主人公(こんな人一度お目にかかりたい!)、敵対する人物と彼を認めサポートする男たち、優秀な美貌の女性(上司)、突飛だがまっとうで才能溢れる女の子・・・こうした人物は藤原作品ではお馴染みとも言える面々で、そこにひっかかる向きもあろう。だがそれはマイナス要因ではなく、もはや様式美の域。気にせず藤原ワールドに浸ろう。さらに本作では、主人公の部下として清々しい青年が登場!! 要注目だ。
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<br />本作は、2005年の「このミス」6位。ミステリともハードボイルドとも、企業小説、青年の成長物語とも読める。この際ジャンルにこだわらず、夢中で読める一篇のすぐれた小説として、ぜひお手にとっていただきたい。
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