私がこの作品について考えるとき、一番思うのが家族を守るため、一人で生きてゆくことが出来るか?と言う点です。
<br />この作品に出会った時、自分にも乳飲み子がおり、もちろん可愛くて仕方が無く、一時も離れたくないと言う思いに駆られていました。
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<br />自分が子を、妻を愛するがため、一緒に暮らすことが出来ないという矛盾ともとれる行動は果たしてできるだろうか?
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<br />この作品には、現代人に思い出して欲しい家族愛にあふれ、親が子を思い子が親を思う。夫が妻を思い、妻が夫を思う。一見当たり前の構図が感動的に描かれています。
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<br />橋の上での親子の別れるシ−ン、切腹前に所持金を数えるシ−ン、五稜郭で長男が息絶えるシ−ン。父親である私が涙を流した、印象的シ−ンです。
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<br />読まれる方の立場で、泣けるシ−ンはいろいろあると思いますが、感動の名作であることに変わりは無いはずです。
方言を多用しているのに実に読みやすい。
<br />設定は幕末の動乱期だが、主人公の気概は極めて現代的だといえる。何が人生で一番大切なのかと問われたときに何の躊躇も無く「家族」といえる生き様をこの時代に持ってきたのが凄い。
<br />自分と家族が生き抜くために、同じ思いを抱えているであろう人間を容赦なく斬る。生きるジレンマを、家族を背負うことで振り払う姿は身につまされる人も多いのでは。あらゆる恥と外聞を捨ててもそれでも生きたいとすがりつく先に家族がある。
<br />本を読んで泣いた事が無かったが、初めて涙した一冊。あらゆる人に読んでもらいたい本です。
子母澤寛の本にほんの少しだけ出てくる「吉村貫一郎」。ここからこのような小説になるのかが・・驚き以外何ものでもない。そこに表現されている世界は作者の創造の世界なのか?当時の武士道の(まあ少ないと思えるが)一例なのか?興味は尽きないが。素直に感動したらいいと思います。戊辰戦争は関が原の戦いと同じでどちらにつくべきかを必死で考えていた「日和ものの藩」が多数いて、どちらにつくべきかをまじめに考える宮仕えの武士、そんなものはマクロ的に吹っ切れて突っ走る薩摩、長州陣営、吹っ切れ方が個人的な土方新撰組、ここに落とし前のつけ方が甚だユニークな「吉村貫一郎」という人物を出してきて作者は我々に何を問いかけるのか?設定とかの意外さに感心しながら新たな感動に驚くという今までにない体験をしました。