全編を貫くのは、男同士の血と涙と心を砕いた面子のたてあいです。
<br />ふと我が身を振り返らざるをえない状況が多々出てきます。今目の前に居る人の何枚向こう側までを気遣えているだろうと。
<br />もちろん時代が違えば対面上重きを置くところも違いますが、皆さんがこの本を読まれているということは現代でも重きをおく男の想いは同じなのかもしれません。
<br />大野氏との幼い頃からの身のおかれ方、子供時代のいじめ、あらゆる局面で心の深い部分に触れてくるやり取りがあります。
<br />途中でフィックションなのか現実なのかわからなくなります。
<br />表面上の感動より一段深いものを感じさせてくれる作品。素晴らしいです。
もともとフィクションであることは知りつつ読み始める。近藤、土方が出てくる。どこからどこまでが本当の話か分からなくなってくる。史実にフィクションが絡む。実にややこしい作品であります。また構成が凝っている。実際に生き延びた新選組の残党が喋っている。斉藤一が思い出を語る。無口の斉藤がである。信じられない。(途中で何度もフィクションであることを忘れる)。ただ展開される世界は明治維新を材料に今の我々に問いかけてくる。「義士御座候」。もはや義士と呼ばれる人物がこの世にいなくなっている。新選組の面白さのひとつに断片的な史実を自分なりに織ってみる楽しみがある。この作品はその楽しみを壮大なスケールで実現したものである。最後の大野次郎右衛門の手紙、面倒で読み飛ばした人も多いと思うけれどここを読んで涙しないと読んだ価値が半減しますよ。
すでにドラマや映画でも取り上げられていますので、ご存知の方は多いとは思いますが、恥ずかしながら私にとっては今回の小説が「壬生義士伝」との出会いでした。
<br />読み終わっての感想、、、すごい(@_@。一人の隊士を生き様を軸に幾重にも連なる幕末の宿命を見事に描ききった作品です。また、タイトルにある「義士」を大方の読者や書評家の皆様は「吉村貫一郎」その人 唯一人を指しているかのように感じるようですが、、、。私は最後のページまで読みきった瞬間、作中の「義士」とは主人公 吉村だけではなく、彼の親友で後に切腹を命じることになる大野次郎右衛門も指しているのだと思いました。もちろん、喜一郎も例に漏れず、、、。
<br />一見、ばらばらのパズルを組み立てるような構成の中で吉村のモノローグ以外のすべての場面に登場する人物がいます。「後の世に真実を伝えうる人」として、新撰組の生き残りの人たちをインタビューして回る人物、、、。恐らくは聞屋か研究者か、最後までその正体は明かされません。ひと言の台詞もなく、ただ「聞き手」としてのみ存在するこの人物こそ、大正時代までタイムとリップした浅田次郎その人だったのでは?
<br />お時間のある方にはぜひお薦めの作品です^.^ 感動すること間違いなしですよ(^_-)-☆