J.ディーヴァーは初読。ドンデン返しの名手と聞いていたのでツイストの利いた短編の連続を期待していた。が、正直言って、期待程では無かった。個人的好みにも依るが、作品によって出来不出来の差が激しいような気がした。
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<br />連続殺人が起きている公園近くの湖に釣りに行く男の話、金の力で無実を勝ち取ろうとする男を待っている逆転のワナ、少女期の残酷さを余す所なく描く話。印象に残ったのはこの3つくらい。後は先が読めるか、プロットが元々平凡なものばかりだ。文章はこなれているので、気軽な読書タイムを過ごすには良いかもしれない。
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帯には「どんでん返し16連発」とある。
<br />しかし、「どんでん返し」と言ってもプロットとしてのものではなく、小説としての仕掛けである場合が多い。
<br />ウィリアム・アイリッシュ、ヘンリイ・スレッサー、フレドリック・ブラウン、ロバート・L・フィッシュ、ジャック・リッチーあたりが好きな短編愛好家としてはアイデアしか売りにできない作品のように思えてならない。
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<br />・・・でも、たまにはいいか。とりあえず、ちゃんとしています。
’03年12月に、アメリカで『Twisted(ひねり)』というタイトルでリリースされた著者初の短編集。
<br />’95年から’02年にかけて、主に本国版EQMM(エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン)に掲載された作品に、著者の代表シリーズのキャラクター、リンカーン・ライムが登場する書き下ろし1編を加えた16編からなっている。
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<br />長編作品におけるジェフリー・ディーヴァーの持ち味である、“どんでん返し”、“意外な結末”、“ノンストップ・ジェットコースター・サスペンス”は、短編でも、いや短編ならばこそいかんなく発揮されている。
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<br />作品のラインナップも、ラストであっと言わせるワンショットものを軸に、ひねりのきいたアイデア・ストーリーから、ハートウォーミングな音楽ミステリー、法廷サスペンス、サイコスリラー、シェイクスピアが重要な役割を演ずる歴史ミステリーまで幅広い。
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<br />いずれ劣らぬ逸品ぞろいだが、特に私の印象に残った作品をいくつかあげておく。
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<br />妻の不倫相手を手にかける男の物語だと思って読んでいると・・・。(『三角関係』)
<br />連続殺人が起きている州立公園周辺へ、趣味の釣りに出かけると・・・。(『釣り日和』)
<br />ストラディヴァリウスの強奪事件が、思いがけず心温まる物語に・・。(『ノクターン』)
<br />罪を認めない悪党と対峙する検事の、逆転勝利の秘策とは・・・。(『被包含犯罪』)
<br />ありふれた失踪事件が、やがてとんでもない事態へ・・・。(『クリスマス・プレゼント』)
<br />未亡人と詐欺師の騙しあいの、二転三転の後の結末は・・・。(『パインクリークの未亡人』)
<br />ストーカーに悩む少女が、本当に邪魔に思っていたのは・・・。(『ひざまずく兵士』)
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<br />本書はディーヴァーから読者に贈られた、まさに‘クリスマス・プレゼント’である。
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