千代が一豊の側室を手配する場面と、一豊がその女性に手を出すか決心するため禅の師に相談した場面には大爆笑しました。笑える歴史小説なんて初めてです。
<br />関ヶ原直前では皆さんご存知の通り千代の才知が光ります。一豊は本当に千代に頼りっきりですね(笑)。千代と一豊のやりとりは、読んでいて楽しくなります。この『巧妙が辻』は司馬さんの作品の中でもちょっと異色かもしれませんね。
<br />読書好きなら世代性別を問わずお薦めできる作品です。
さて、第3巻は関ヶ原の合戦前夜の政治情勢が背景になっています。
<br />司馬遼太郎といえば名作「関ヶ原」があまりにも有名ですが、この巻はさしずめ関ヶ原の裏面を描いているとでもいえますでしょうか。
<br />自家の存亡を家康に託す一豊と千代、家康も味方を増やそうと一豊たち秀吉ゆかりに大名に取り入ろうとする。そのあたりの政治的機微を千代の機転に絡めて、描いていくあたりはさすがといえます。
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さしたる才能に恵まれているわけでなく凡庸で、愚直なほどに誠実を貫き通す主人公こと山内一豊(伊右衛門)が、美しく聡明で卓越した政治感覚をもつ妻こと千代に支えられながら二人三脚で戦国時代を駆け抜け、ついには土佐24万国の国持大名にまで駆け上がる人間味溢れる感動のサクセスストーリーです。 千代が一豊を賢明に舵取りするというよう、愛に支えられた「内助の功」が隋所に見られるだけでなく、様々な人間の権力の中を上手に渡り歩くという卓抜した政治感覚は現代にも非常に示唆するものが多いです。
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<br />第三巻では、醍醐の花見を経て、秀吉の死、そして風雲の関が原前夜までを描く。西軍か東軍かで諸侯が奔走する中、千代が淀君の執拗な取り込み工作を見事にかわし、北の政所側につく政治感覚及び器量には目を見張るものがあるし、一豊の関が原前夜の山内家内群議の名演技ぶりも必見です。また、この巻では当時の大名の生活風景が描かれているのも興味深かったです。
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