一族が食いしん坊さんのロシア語通訳者、米原万里さんの食にまつわるエッセイ。<br />英語圏以外の世界に触れることができる有り難い一冊でもあります。<br />「旅行者の朝食」とはかつてかの国の缶詰のひとつ。<br />読み終えると統括するに相応しいタイトルだと気づきます。
なんてお気楽な気分にひたることができるくらいに私たちの国は、少なくとも平和ですね。もちろん、相反する状況が次第に大きくなっているような感じもあるのですが・・。そんな気分の中で妙な平和ぼけにならないようにするには、この方の随筆がなんともおすすめであります。いろいろな外国の人たちとつきあったり、外国の文化に触れて影響を受けたり、ということがあるときに、では自分はいったいどういう人間で、どういう文化の中にいるのか、ということを考えさせられることがしばしばです。米原氏の著述は、そういうことを主に旧東欧圏と呼ばれる文化の中で育まれ、当時の国境が無意味となった今においても生き生きとした息づかいを持っている現地の慣習とか、食べ物とかを通して、考えるすべを私たちに示してくれている、と思います。最近観た「グッバイ!レーニン」という素晴らしい映画にも通じる、思慮深きユーモアの世界。この本を読んで以来、ロシア語を話せるようになりたいと思うようになりました。
ちょっと変わったタイトルに躊躇して、手にするまでに時間がかかった一冊。読んでみると期待以上で、どのページを開いても面白い!標題の缶詰やキャヴィアの話など、ロシア・東欧圏の食べ物の話がやや多めだが、いろいろな国の食文化を通してそれを食べる人々の様子が見えてくる。
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<br />私にはハルヴァ(トルコ蜜飴?)のくだりが印象的。思わず美味しいハルヴァを探す旅に出かけてしまいたくなる。