殺したい相手を「誰か」に殺させるのが死刑制度。
<br />その「誰か」が書いた本。
<br />死刑制度について語る前に読んでおきたい。
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<br />死刑制度そのものの是非ではなく、実際に死刑が執行される現場とは
<br />どのようなものなのか、それを執行するものの精神状態はどうなのか。
<br />そんなリアルな現場の話が書かれています。
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<br />死刑が確定してから執行されるまでの間
<br />・・・それは時には数十年にもなる・・・
<br />その間を共に過ごしてきた人間が、いかに死刑囚が更生していたとしても、
<br />命令がくれば拒否することも許されずに「職務としての殺人」を
<br />行わなければならない苦悩。
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<br />作家が書いたような秀逸な文章ではないが、それだけに生々しさと
<br />苦悩が伝わってくる。 死刑賛成の人も反対の人も、ぜひ読んでみて欲しい。
確かに一般人が知らなかった事実や意外な真相といった記載もあるが、これが死刑制度のすべてとは思われない。後半から、主題が散漫になり、現実の出来事に似せた小小説まで出てくるが、中途半端に終わっている。
<br />この本でもっとも興味深かったのは、死刑囚を身体的にも精神的にも正常に保った状態で(できれば罪を認め、改悛させた状態で)刑を執行できるようにすることが刑務官の任務であり、苦労するところであるという記述。
さすがに元刑務官による著書だけあって、日常われわれにはうかがい知ることのできぬ、死刑という極刑の内情と刑務官の職務内容、死刑囚との関わりあいなどが濃密に描写されている。衝撃の内容に、一気に読了したが、テーマがテーマなだけに暗鬱とした気分になる。