神聖皇帝は、土鬼領土を侵略したトルメキア軍撃退のために、人工的に変異させた粘菌を地に放つ。怒り狂う粘菌は大地にあるものを全て食い尽くしながらどんなマスクもきかない毒をまき散らしながら、凶暴な速度で巨大化する。<p>粘菌を鎮めるために、王虫を含む腐海の虫は全て集まり、粘菌に食べられる。おそれていた大海しょうが起こったのだ。虫に襲われてクシャナの軍は壊滅。死線を越えたクシャナは憎悪と怒りにとらわれていた生き方からの転機が訪れる。一方、トルメキア軍は略奪した奴隷と物資を持って退却。領土の大半を失った土鬼皇帝はトルメキア侵攻をもくろむ。<p>人類の愚行の繰り返し、止められない犠牲。虚無と対決してきたナウシカも、とうとう王虫とともに菌類に食われ、腐海の一部となることを望み、粘菌の終結地点にたたずむ。全7巻のうち、ナウシカに訪れた最大の危機だ。読んでいるぼくにもやりきれない思いが募り、人の力の限界にうちひしがれそうになる。
宮崎作品としてアニメ映画になっているので有名だが、原作の完成度は映画を遥かに凌駕する。<p>「ゲド戦記」「はてしない物語」等の世界の傑作ファンタジーと肩を並べるにふさわしい作品である。構成・哲学・神話性・多様さ・物語性どの面についても深さがあり、しかも読ませるリズムと長さがある。物語が進むにつれ主人公も成長するが、成長につれて単純な勧善懲悪ではない世界の多様性もまた明らかになってくる。<p>宮崎アニメは世界に通用する、と言われているのは知っていたが、この原作は翻訳されているのであろうか?世界の読者に知らされるべきファンタジーの最高傑作のひとつであると思う。