腐海の菌類は土壌にたまった毒を無害化するために働いている。大地の毒を結晶化しつくすと再び清浄な土と水と空気がよみがえり、人類はもとのように暮らすことができる。映画の『風の谷のナウシカ』はそのような設定のもと「森と共に生きよう」というメッセージを残して終わる。<p>ところが、コミック版第4巻では、そのような予定調和の世界が全く存在しないことが暗示される。<p>ユパは腐海を歩きながら、不思議な少年セルムに問う。腐海の最深部は1000年前に生まれたはず。そこにはもう浄化された世界があるのではないか?と。<p>森の人の一族は森の中だけで暮らすことができる。腐海の中をどこまでもどこまでも、最深部まで行けるはずだ。腐海の毒が尽きた世界までたどり着き、そこがどのような世界であるかを知っているのではないかという疑問がわくのは当然だ。ところが、セルムは答える「それを語ることは禁じられている」と。<p>腐海の毒が浄化され尽くした世界は必ずあるはずだ。ところが、それについて語ることがタブーとなっているのは何故だろう? その答えは第7巻になってようやく明かされる。壮大な物語の転換点となったのが、この第4巻なのだ。それにしても、宮崎駿氏の頭の中には、この時点ですでに物語り全体の構想と落着点が見えていたということに驚く。その他、この巻には、たくさんの伏線が張ってあることに、後になって気づく。それもまた恐ろしい話だ。
3巻までの華やかな戦絵巻から打って変わって、4巻の内容は沈鬱です。人間の手で始められた戦争が人間のコントロールを超えたところで転がり始め、物語の雰囲気が少しずつ変わって行きます。<br>始まりつつある絶望的な破局の中、子守唄を歌うクシャナが印象的でした。
非常に面白く、アニメが好きだった人は、必ず気に入るはずです。死、戦争、人間に醜い面を見せながらも、すっきりした読み応えです。<p>人工の腐海とその秘密、ドルクとトルメキアの戦争、巨神兵、粘菌の侵食と、この巻は、話のクライマックスへ緊迫感をかかえながら勢い良く上っていきます。静かな場面と激しい場面との差が激しく、宮崎 駿特有の雰囲気が楽しめます。複雑かつ深く、感動します。