日露戦争の四方山話のテンコ盛りでした。
<br />そのなかで、サラッと記された「旅順」よりも「奉天」よりも
<br />「脚気」が最大の被害だったという事実。
<br />その加害者が森林太郎こと文豪・森鴎外というのにはびっくりでした。
<br />「脚気」そのものの認識がなかったので余計ですが。
<br />ラストの「死にたくなる極限状態の気持ち」と
<br />「児玉の相反する守るべきもの」も考えさせらました。
<br />雨の坂の乃木をいつまでも見つめ続けたひとりです。(泣)
私はこの本の中では島村速雄が最高によかったです。「優先順位の在り方」という提言が「戦争」「戦場」「参謀長としての立場」という究極の場でなされたところにも意義があったと感じました。というかスケールが全然違う。圧巻でした。<br>高橋是清や小村寿太郎などもよかったです。福島安正と乃木が可哀相で組織の在り方というものを考えてしまいましたが、それよりなにより!文豪「森鴎外」には心底腹が立ちました。児玉と島村が持ち得た明治の気骨には素直に感動です。
「坂の上の雲を101倍堪能する」と銘打って、司馬の誤りを訂正しているね。批判じゃなくて。また、本書の記述は司馬の記述ミスの地雷を踏まないように慎重に綴られている。人物を主軸に日露戦争の進行過程を描く構成や多くの関連書籍から登場人物の存在感を原作以上に立体化させている。面白いのは司馬以上に乃木を批判するスタイルなのに、他の登場人物や情況描写で読者に乃木への感情移入させておき、最後に児玉の台詞ひとつですべてを救ってしまうところだ。これも司馬の誤りの訂正という姿勢なのだろうか。構成・使用写真・ボリューム以上に貪欲だ。泣かせるしね。