看板に偽りあり。本書では中国の事なんかほとんど出てきません。
<br />原題を直訳すれば「暴かれた新世界秩序」ですし。
<br />そして、本書の内容はといえばありふれた陰謀論に終始し、
<br />世界は国際金融資本財閥に裏から支配されている。
<br />その黒幕は、この手の陰謀論にはお約束の、ユダヤ、フリーメーソン、イルミナティ等の秘密結社。
<br />ロシア革命、ナチスを援助したのも彼ら。真珠湾攻撃もアメリカは事前に察知していた。
<br />911テロもアメリカの自作自演。
<br />ケネディ暗殺もCIAの仕業。「支配階級」の重要な資金源である麻薬利権・戦争利権を
<br />忌避したから暗殺されたという。。。
<br />みんなどこかで読んだような話ばかり。
<br />そして、世界を裏で操る勢力のバックには異星人がいるのかもしれないと
<br />示唆するにいたっては・・・
<br />
<br />で、結局、中国云々は、アメリカ経済は今後衰退するから、新市場・地域大国として中国が重要になる、
<br />といったきわめて当たり前の、こんな大風呂敷を広げなくてもわかり切った結論。
<br />陰謀論好きの読者も肩透かしを食わされることと思います。
<br />
<br />あとがきで、訳者は、本書を読んで理解すれば最高の知識人になれると豪語していますが、
<br />それほどの本でしょうか。上下二巻に分かれていても、同じような言い回しが多く冗長ですし。
<br />はっきりいって、ネタ本として楽しむにしても(ビジネス書としては論外)
<br />良い出来とはいいかねます。
−最上の指導者は(その存在を)誰も知らない。その次の指導者は人々に親近感があり、ほめたたえられる。その次の指導者は畏れられる。最下等の指導者は軽蔑される−(老子)
<br />
<br /> 「コンスピラシー・セオリー(陰謀説)」というタイトルの映画もあったが、古来、世の中は見えざる勢力(グループ)に動かされている、という説は後を絶たない。その主体は時によってフリーメーソン、共産勢力、ユダヤ金融資本、軍産複合体、石油利権、ネオコン、宇宙人、地底人(!)、…など。特に911以降、あれは仕組まれたのだ、実は…という本がいくつか出版されている。
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<br /> 本書は、もうずいぶん以前からあった説だがユダヤ金融資本の親玉、ロックフェラー家がアメリカ、果ては世界を支配し、国際紛争を操り、利権を拡大している…という内容である。その影響力はアメリカ大統領を指名し、その外交政策を決定するという。またその「闇の勢力」はエイズウィルスを合成し、アフリカで天然痘予防注射に交えて広めたという。
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<br /> 確かに本書に指摘されるようにビン・ラディン家とブッシュ家がビジネス上で古くからつきあいがあった事などは既に事実として確認されているものの、確かめようもない話も多く、本書をトンデモ本と見るか、信じるかは読者次第であろう。ただアメリカのメディアがコングロマリットにその支配権(株式)を押さえられているのは真実であり、そのため支配者に都合の悪い事実は大手メディアでは絶対に出てこないのも本当だろう。
<br />
<br /> 構成はニュースレターのように次々と事例が羅列され、間に詳細な訳者の注が挿入されるので、一冊の本としては読みにくい。だがその分妙な迫力がある。
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<br /> とある右翼団体の長に直接聞いた話だが「(ブッシュ再選前)次の大統領はもう一度ブッシュ。その次は(アメリカの支配勢力が)ライスに決めたらしい」と。その後本当にブッシュになり、ライスは国務長官の要職についた。彼は右翼の情報網があるのだと言う。果たして…?
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<br /> −すぐれた行為者は痕跡を残さない−(老子)
本書は本当か?嘘か?と賛否両論あるように思うが、一読はしておいた方が良いと思う。
<br /> ケネディ暗殺、クリントン、9・11、エイズ、食糧危機等、数々の陰謀は果たして真実か?
<br /> ついでに言えば、下巻は上巻の補足になっているので、読むのは上巻だけで充分のような気がする。
<br /> 一方でエンターテイメントとして捉える考え方もある。それも問題はない。ただ手にとって損はない一冊である。