いままで、世界経済のグローバル化は、自由貿易を推進して、消費者の利益を図るものと信じていました。
<br />なぜ、世界中でグローバル化に反対するデモが多発するのか疑問でこの本を読みましたが、その理由が、よくわかりました。
<br />自由貿易とは名ばかりで、アメリカの輸出が促進されるだけで、他の国のアメリカへの輸出にはさまざまな障害が設けられているのだと。
<br />関税を相互になくしても、一方が、自国産業に補助金を出せば、これは関税と同じことです。
<br />アメリカやEUは、工業製品の関税撤廃を要求する一方、農業分野でな補助金を出すことで、不公正な貿易を進めているのだそうです。
<br />以下、この本を読んで知った驚きの抜粋です。本を読むと、ほかにもいろいろな驚きがあります。
<br />・アメリカはBSE発生を理由にブラジルからの牛肉輸入を拒否しています
<br /> (日本には米国産牛肉の輸入を強要しておきながら。。。)
<br />・EUの牛肉生産には1頭当たり1日2ドル相当の補助金が出されていますが
<br /> 最貧国の国民の1日の収入は2ドル以下だそうです。
<br /> 著者によれば、これらの国で人間として生活するより欧州で牛として生活するほうが
<br /> ある意味、豊かでさえあるというです。皮肉な表現ですが、衝撃です。
<br />
「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す 」という書名からすると、なにやら過激で感情的な反グローバリズム本かと思ってしまいますが、さにあらず。現代は"Making Globalization Work"という穏やかなものです。
<br />著者のスティグリッツは机上の経済学者ではなく、クリントン政権と世界銀行で実際の政策に携わり、さらに世界中を飛び回って見てきた経験を持っており、その豊富さには圧倒されます。この本で示される多くのエピソードが大きな説得力を持って迫ってきます。
<br />この本はワシントンコンセンサスやIMFの政策など、国際金融政策の批判に多くのページが割かれていますが、それにとどまらず、地球環境問題や知的所有権の問題、それに基軸通貨としてのドルの将来に疑問を投げかけるとともに、前向きな政策提言も数多くなされています。
<br />改革という言葉が他人を貶めるための空虚なスローガンに堕してしまい、「グローバル化=アメリカ化」といった安易な議論がなされている現在の日本においても、この本は多くの人に読まれるべきでしょう。この本が、もっと冷静で公平な議論ができるきっかけになればと思います。
著者のスティグリッツは明確に民主党支持.その点で本書の中でブッシュ大統領の政策を非難することは当たり前であり,その部分はきちんと割り引いて読まないと,変なバイアスがかかってしまうでしょう.とは言え,内容的には傾聴に値する議論がなされている.特に視野の広さはやはり超一流,本物の学者の雰囲気がする.また単なる学究の枠を越えて,実際の政策面での提言を数多くしていることもすばらしい.アメリカが民主党政権になった時には,間違いなく政権の中枢入りする人でしょう.ヒラリー頑張れかな・・・(^^)