もし自分が高校生の頃この本を読んだとしたら、興奮して、驚愕して、すぐにでも脳科学に飛びついただろうと思う。脳における機能局在や、視覚のあいまい具合、さらには自分の「心」とは何か?、と想像もできないようなことが次々とでてくる。かなりエキサイティングだ。
<br />
<br />「心」の問題に関する池谷先生の考察は興味深い。僕は次のように理解した。悲しいとか嬉しいといった一般的に自分の心だと思われる感情は、実は脳の副産物である。つまり脳の活動をダイレクトに支配しているわけではない。普通の感覚からすると違和感があるかもしれないが、僕はこの考え方の方が逆にすっきりした。みなさんはどう受け止めましたか?人によってはかなりの衝撃だったのではないでしょうか。
<br />
<br />こういう驚きは僕と同世代の学生や、中高生に味わって欲しい。とういことで5つ★
<br />
どこかで見たことがあるのだけれど具体的に思い出せなかった”脳地図”に、「進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線」で再会しました。体性感覚野の体部位局在の状況を表した図です。ペンフィールドの脳地図と呼ばれているそうです。
<br /> この図を見ると、感覚にとっていかに顔と手の重みが大きいかを脳の実装として具体的に理解できます。いままで断片的にしかしらなかった脳についての知識がつなぎあわされ、隙間が埋まっていく喜びを感じます。シナプスのミクロな構造と脳全体のマクロな動きでは相当なギャップがありますよね。かつて、遺伝・発生におけるDNAと生体の間が次々と解明されているのに比べて、脳の領域の解明スピードが遅いのではないかと思っていた時期がありましたが、ただ勉強不足だけだったのかもしれません。
<br /> また、脳単体のハードウェアとしてはイルカの方がいいのだけれども、入出力が人間のほうが多いので結果として利用効率がいい、なんていう話も、いろいろな想像をかきたててくれました。
<br /> ちなみに、純粋に脳の知識を知る以外にも、個人的にどう脳を使えば効率がいいのか、どこに限界があるのか、といったことの役にもたつと思います。わかりやすさを追求して多少大胆に説明した部分もあると作者が最後に述べていますが、研究者ではない一般の人はまずは知的関心をもつことが優先なので完全な正確さをうんぬんしなくてもいいですね。
高校生物の授業や学内の短期セミナーで、こんな内容の授業があったら、勉強に興味が持て、もっと楽しく感じられると思います。高校のカリキュラムで、たまにはこんな授業があって、いいのではないでしょうか?(でも、今の高校の生物の先生とかでは、この本みたいな説明の仕方はなかなか出来ないでしょうね)
<br />大脳生理学をやさしく説明するのは、難しいと思いますが、それを分かりやすく説明した良書だと思います。
<br />最後の方にある行列を利用した話もフムフムと読ませていただきました。十何年ぶりかに目にしたのですが、理解できました。学生時代にきっちり勉強しておくことが、やっぱり必要かも知れませんね・・・。
<br />
<br />中高生向けに書かれているかも知れませんが、大人でも充分に読み応えあります。