評判の映画が公開される前に良く出されるノベライズではなく、いわゆる番外編と言った感じで、バラゴが闇に堕ちてゆく過程が描かれている所など、本編にはないサイドストーリーが存分に楽しめます。文章も非常に読みやすく、読み物としての出来も及第点。
日本アニメ黎明期からの脚本家・辻真先が堅物のミステリマニアを唸らせる本格ミステリを書いたことを知っているか!?
<br />ハリウッドの異才である脚本家・テリー・サザーンがポストモダン小説の先駆を行く実験小説を書いたかとを知っているか!?
<br />映像を前提とした文章を書く彼らが、洋の東西問わず、小説を執筆した時に、純粋なる小説空間でけで遊び倒すことはあまり注目されていない。
<br />だが、実際は、脚本家執筆小説文学史を編まねばならぬほど、その影響は大きい。
<br />その歴史の末尾に記されるべき、最新のタイトルと著者名が小林雄次著「牙狼 暗黒魔戒騎士編」である!
<br />急いで付け加えれば、文学や先人の仕事を持ち出しハクを付けるつもりはない。
<br />ここではTV版では拾えなかったキャラクターたちを丹念に描くという至極真っ当なことがなされ、親から子・師から弟子へと死しても紡がれる生の意味という主題が明確にされているに過ぎない。
<br />それが、蜘蛛の紋様の如きトラフィクス(交通網)を描く。
<br />ワキ役の一人一人に迄固執する姿勢は読者と同じ「牙狼」への愛に貫かれている。
<br />複雑で読みにくいだって?映像と違い直ぐ読み返しが出来るのが小説というメディアではないか!
<br />小説を読み返し、又TV版が観たくなる。
<br />ノベライズ本来の目的に合致し、同時に小説の意義を満たした稀有な物語である。
「暗黒魔戒騎士篇」という事で、TVシリーズを小説化したものかと思ったら大間違い! 番外編であり、まさに「暗黒魔戒騎士篇」であると言えると思います。
<br />ヒロインのカオルの出番が少々少ないのが不満ですが(笑)一話を除いて、他の以外なキャラ達のエピソードが盛りだくさんで、読み応えがありました。
<br />ただ、TVシリーズのとのリンクがちょくちょくあるので、小説から牙狼に入るのはキツイと思われます。知ってる人は、最初から牙狼をまた見たくなるような小説ではないかな。