「私たちは『にもかかわらず』愛し、信じることが問われている。『愛しやすいこと』を愛し、『信じやすいこと』を信じることからは、回復ははじまらない」(本文より)。親の思いが伝わるのは、子も人生の試行錯誤を苦しみ味わった後。変わりに悩まないことこそ、親が子にしてやれることかもしれません。
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本を読んだあとは、実はいくつか疑問がありました。
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<br />そこで著者の向谷地氏と田口ランディ氏のトークショーがあるというので行って参りました。実際にべてるの家で暮らす、統合失調症に悩む二人の方も同席されていました。
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<br />感じたのは、向谷地氏のお人柄。
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<br />最後の質疑応答で、べてるの住民と同じように精神を病んでいる家族をお持ちの方々が様々な質問をしたのですが、すべてに温かく、そしてユーモラスに答えていました。
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<br />本を読んだ限りでは「はたして病気は回復するのか」という疑問を受けましたが、実際にお会いしたところ「回復がすべてではない」と考えていることがよくわかりました。
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<br />病気があったって、人間として幸せに生きれればいい。
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<br />温かく正直でユーモラスなお人柄が、この本に詰まっています。
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<br />生きてゆくうえで大切なものを、思い出させてくれる一冊です。
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<br />勝ち組、負け組とつまらないことで騒ぐ前に、静かな気持ちでこの本を読んでください。
「べてるの家」という精神障害を抱えた施設の仲間達の話です。
<br />精神障害は辛い病気で本人や家族も含め、どうしたらいいかわからず追い詰められるものです。
<br />しかし、この「べてるの家」には精神障害者同士で助け合い、少しずつ克服していく仲間達がいます。
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<br />今の世の中、少し前と比べただけでもおかしくなっていると思いませんか?
<br />人と人の心が通じ合うということが少なくなったと思います。
<br />ここ「べてるの家」には障害はあるけれど、その障害によって本来あるべき人と人とのつながりが見えてきます。
<br />そこにいる相手を自分のように愛すことができる環境があります。
<br />これが本来あるべき社会なのではないでしょうか。
<br />心温まる一冊です。