W杯やオリンピックをのほほんと見ていた人に、冷や水を浴びせかけるような本です。アディダスとプーマというスポーツブランドのライバル関係が、今日のスポーツを巡る汚れた金の流れに繋がっていく様には怖気を振るいます。スポーツ選手が平然と金銭を要求し、スポーツブランドが喜んでそれに応じる・・・もうオリンピックを心の底から楽しめる日は来ない、そんな風に思わせてくれます。
<br />とはいうものの、この本は基本的にはスポーツブランドの隆盛と没落を描いたビジネス書。ライブドアや楽天が目論んでいるような、企業の買収劇がアディダスというブランドにおいて如何に演じられたのか・・・詳しく記述されていてとても興味深く読むことが出来ます。ライブドア対ニッポン放送の争い等も、このように詳細にルポされたらすごく面白いのかもしれませんね。
<br />アシックスやデサント、ルコックスポルティフといった日本でも馴染み深いブランドと、アディダスやナイキとの関係は私には目から鱗のお話でした。また、日本サッカー協会とアディダスとの黒い?関係も恐ろしい限り。
アディダス、プーマというブランド名に普通のスポーツファンやサッカーファンの人は惹かれるかもしれませんが、この本はビジネス書です。おススメはできません。
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<br />一方でビジネス書としては秀逸だと思います。営業と技術を上手く分担していた二人の仲違いにはじまり、ローカルビジネスがグローバルビジネスになっていく中での問題発生、商品の競争力が技術力からマーケティングに移っていく様子、新興企業の隆盛を許してしまった大手既存企業など、面白いトピックが満載です。
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<br />また、章立ても各章が短いので読みやすくなっています。ビジネスケースとしては非常に面白い本でした。
自分は本屋でこの本と出会い、オビの中村俊輔のことに惹かれて購入
<br />した。が、俊輔のことは殆ど書かれていないのでそれ目的の人は再検討
<br />した方がいいでしょう。
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<br /> とはいえ、スポーツシューズ界の中でもビッグネームのアディダスと
<br />プーマが最初はダスラー兄弟商会として一つの靴屋だったなんてこの本
<br />で初めて知った。その後、販売面リーダーの兄と靴製作面リーダーの弟
<br />の不仲により兄プーマ・弟アディダスと別れていき、スポーツビジネス
<br />戦争の話はとても面白い。ナイキ・リーボックとの絡みも面白いし、
<br />日本がこの戦いのなかでも結構大きな舞台を担っており(アシックスと
<br />か)中盤まではグイグイ読ませます。
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<br /> この本の欠点は後半失速することだろう。だいたい年代順に語られて
<br />いくのだが、話が古ければ古いほど(本の前半)詳しく生々しい。ドロ
<br />ドロした話も前半〜中盤にかけては出てくるのだが、後半はあっさりし
<br />た感じです。まぁ取材される方も古い年代の話はもう時効のような感じ
<br />で口が開き、新しくなればなるほど口が堅かったのかな。
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<br /> 90年代までの話は非常に面白い。00年代の現代の話(本の終盤)は
<br />正直読んでても惹き込まれるようなものは何もない。
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<br /> 総評としはお薦めの部類に入ると思う。