『ヤバい経済学』(ベストセラーらしいですね)に続いては『まっとうな経済学』。著者も違うし、原題も全然違う("The Undercover Economist")のだが、内容は確かにまっとうである。
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<br />表紙にもなっているレモン=粗悪中古車の話を始め、経済学の最近の基本的なトピックをざらっと網羅している。
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<br />著者は、イギリス出身のエコノミスト。現在は世界銀行で働いている。普通の(?)エコノミストと違って、結構フットワークが軽くって、この本の中身も実際にイギリス、アメリカ、中国、カメルーン(!)とで自身が体験したことがもとになっているところに好感がもてる。
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<br />そして、もっと好感が持てるのは、経済学を、実際に世の中の役にたてようとしていることである。新聞に出てくるような「エコノミスト」の表面上の仕事---株価のトレンドを予測したり、業界を分析したりすること---は一部の投資家の利益になることはあるけど、でもそういった仕事は実質的に「経世済民」の役には立たない。ハーフォードはケインズを引用して、「経済学者は、理論構築家ではなくって、歯医者のような実務家、世の中の実在する問題に対処できる存在に早くならなくてはならない」と本気で思っている。実際に、アメリカの医療問題とカメルーンと中国を描写した箇所ではそうやって世界の虫歯を本気で治療しようとする心意気を感じる。
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<br />繰り返すけど、せこい邦題のつけ方ではあるが、内容は本当にまっとうである。一応、『ヤバい』の著者も賛辞を寄せているようだ。
Levittの論文を平易に説明したこの著者の著作「ヤバい経済学」は最高に面白かったが、
<br />彼は、どちらかというと経済ジャーナリストであって、
<br />超一流の経済学者であるLevittの分析と比べると、
<br />少し経済学をかじったことのある人にとっては、彼の分析はあまりにも「まっとう」すぎて、
<br />目から鱗が落ちるというほどではない。
<br />「ヤバい経済学」の完成度があまりにも高かったのでちょっと低めの評価ですが、
<br />最近流行のこの手の類書と比較すればよい本だと思います。
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スターバックスのコーヒーが値上げされた。
<br /> 値上げされてもお客の数は全く変わらない。
<br /> その理由は、この本を読んでいたのでわかったような気がした。
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<br /> ユニークな交通渋滞の解決策へのアプローチ。
<br /> ゲーム理論と電波免許入札。
<br /> グローバル化に対する批判への実例による反論。
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<br /> などなど、数々のユニークな経済学的考察による、「経済学とは人間を幸福にする学問である。」と言う著者の言葉に、現代社会の抱える様々な問題への処方箋を垣間見た。