採点の方法に難がある。<br /><br />1人の評論家が3点を付けたものと、5人の評論家が1点を付けたものとは、後者の方が評価は上になる訳だが、私はどうしたって前者の方に惹かれる。<br /><br />そもそも、評論家がある曲の全ての録音を聴いている訳ではないというのが大問題。<br />最低限、誰かが挙げた録音は、改めて評論家全員が聴いてみて、もう一度採点しなおす手続きが必要だろう。<br />その際、各人は-5〜0〜+5の間のいずれかの点を、必ず付けなければならないようにするとか、ならなおよい。<br /><br />それが無理ならば、聴いたことがないものには「未聴」、聴いたけれど覚えてないものには「忘却」という表示を付けさせるべきだ。<br />そうなると、より、自分と合う評論家が見付けられると思う。
作曲家毎に名曲を選定し、10人の評論家が、名盤と思うもの3枚を挙げ、1位:3点、2位:2点、3位:1点で集計し、アルバムランキングをつけたものの第2巻です。名曲と呼ばれる物になればなるほど、沢山のアルバムが出ており、どのアルバムを選べば、失敗しないで済むか選定の参考になる本ではあります。ただ、上位にランクされたアルバムは、好演ではあっても、感動に震える名演ではないことが往々にしてあり、上位のアルバムを買ったからといって、必ず「ああ、素晴らしいアルバムだった」ということにはならない点は注意すべきかと思います。ランクを参考にしつつ、自分と好みのあいそうな評論家の選んだアルバムをセレクトする方が、選定の仕方では良いのではと思います。
<br />ちなみに、第2巻の作曲家では、モーツァルトの曲が半分近くを占め、マーラー、メンデルスゾーン、ドヴォルザークらが取り上げられています。
本書は自分の代理人としての評論家を選ぶための本だと思う。
<br />人の感じ方は千差万別である。それは普通の音楽ファンも評論家も同じこと。結局評論家も自分の感性で各自の推薦盤を選んでいることが、本書を見ればよくわかる。
<br />だから合計点が高いものが必ずしもいい演奏だとは限らない。むしろたとえ点数がゼロでも、自分が良いと思った演奏がその人にとっての名盤と思う。
<br />著名な評論家が褒めているのでこの演奏はすばらしいのだろうとか、批判しているのでだめな演奏なのだろうとか思い込むのは全くのナンセンス。大事なのは自分の感性である。
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<br />では自分にとっての名盤を多くのCDから見つけ出していくにはどうすればよいか。
<br />自分で沢山のCDを買って好みのものを選んでいくことが理想だろうが、金銭的にも時間的にも難しい(少なくとも自分には)。
<br />なのでここで本書と評論家を利用すればいいと思う。評論家は音楽を聴いて評価を発信することを生業にしているので、多くの演奏に接し評価しているはず。
<br />先ずはいくつかの曲でCDを買って、自分が感じた評価と同じような評点のつけ方をしている評論家を見つけ出し、こんどはその評論家が推薦するCDを買って自分で評価してみる。
<br />こうして自分の感性と近い評論家を絞っていき、後はその人の評価を参考にしていけば、自分にとっての名盤を見つけるのに外れが少なくなると思う。
<br />こういった使い方をすれば、本書は最良のCD紹介書のひとつだと思う。
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<br />評論家は信奉するものではなく利用するもの。
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