機械式時計 解体新書―歴史をひもとき機構を識る みんなこんな本を読んできた 機械式時計 解体新書―歴史をひもとき機構を識る
 
 
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機械式時計 解体新書―歴史をひもとき機構を識る ( 本間 誠二 )

2006年6月14日リリース。筆者は昭和24-34年という黄金期の第二精工舎に所属した技術者である。最近15年以上使いっぱなしでほとんどオーバーホールしなかったロレックス・デイトジャストを修理に出した。その中でロレックスというのは天然サファイアを軸に使っている事などを知って、この際こういう本が読みたいと思って購入した。 <br /> <br />全編に技術者としてのノウハウと時計に対する愛情が溢れている。もの凄く深い本である。世界の傑作時計をつぶさにロジカルに分析するあたり感嘆の連続だった。単純にロレックスのロジックのみを知りたいという場合は別の本の方がいい気がするが、時計そのもののロジックを知るには好著だと思う。

そこらへんにある時計の本とは奥行きの深さが違います。昨今の機械式時計ブームに乗った本は数多くありますが、その殆どは時計をファッション的に捉えており、構造解説があっても「ちょっと小難しいことも書きました」と言わんばかりのものです。その点、本書は自らも時計師であった本間氏が監修しているだけあって、構造解説も丁寧且つ的を得ています。私は本書で初めて機械式時計の基本的原理が理解でき、かくも複雑、精緻なものが13〜14世紀には存在していたこと知り人類の叡知に改めて驚きました。また、氏は単に時計の解説をするだけでなく、「世界時」と「原子時」の関係、或いは時と文化の関係など、「時」ということを誠実に説明してくれています。後半の代表的時計紹介も氏の深い造詣に基づく基準で選定されており、各々の時計の価値がどこにあるのか、とてもよく分かります。とにかく感動的な本です。大変満足しました。

本書では各種腕時計の構造が分かりやすい図で示された後、防水機能のテスト方法や腕時計の各種機能の意義について教示され、後半では多くの代表的なモデルを鮮明なカラー写真で見せてくれる。これらの内容は、腕時計ファンにとっても驚きの連続で、この小さなケースの中に人間の英知が濃縮されている事がよく分かる。多くの時計メーカーはクォーツ式のものに比重を移しているが、本書を読むと、機械式腕時計と共に生きる喜びが実感出来る。 <br /> <br />本書の後半の永久カレンダー内蔵腕時計のモデルの解説では、グレゴリウス暦に関しても同時に解説され、それに応じた永久カレンダー内蔵腕時計が紹介されている点も興味深い。1年は365日5時間49分と少々半端である事から、うるう年の無い年を数百年単位で不規則に設けて辻褄を合わせているのが現在使われているグレゴリウス暦だ。いくつかの永久カレンダー内蔵モデルには100年かけて1回転しかしない歯車を組み込む事で、カレンダーを正確に作動させる。思うに、100年という単位は人間の平均的な寿命よりも長いが、機械式腕時計は世代を超えて受け継がれるべきものなのかも知れない。安易に物を使い捨てる傾向の強い我々の生活に警鐘が鳴らされている思いだ。それは、資源を大切に使うという姿勢を教えてくれている様でもある。 <br /> <br />本書は機械式時計を通じて「人生」をも教えてくれる。

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