これは異様に美しい本だ。AERAで山形浩生氏が激賞していたが、私たちは本書で従来の人間観を根底から問い直さざるを得なくなるだろう。人間は遺伝子の制約を超えて、心身を自由に変えることができるようになるからだ――それは私たちがみずからを芸術作品のように自由に創造できることを意味する。こうした人類の飛躍を、著者は新たなカンブリア紀にたとえているが、実現すれば(いや山形氏もいうように、本書の未来図はまず実現するだろう)生命の進化史における一大事件に違いない。自然というカンバスにはじめてそのカンバスの枠を自由に超えうる種が誕生するーーこれが異様な美しさでなくてなんだろうか。
本題からして何かSF的なイメージを持って読み始めましたが、読み進めていくうちにその驚愕な内容に唖然としてしまいました。
<br />人間の生命や能力を増進させるバイオの技術、脳とコンピュータをインターフェースで繋げる研究(いわゆるサイボーグの前兆)等、その内容には驚かされます。
<br />これらの技術は現在進行形であり、この先どういう進展がなされるのか非常に興味深く探ることが出来ます。
<br />勿論様々な課題もありますが、人類の未来に関わる選択でもあり、新たな社会の構想を問いかける書でもあります。
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<br />本の中身はほとんど文章だけで構成されている為、解読に少々難を要するかもしれません。その点は残念な気がしました。少なからず図解を入れるべきだったでしょう。
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先頃、NHKスペシャル『サイボーグ技術が人類を変える』を見て、テクノロジーの進化がSF小説や「攻殻機動隊」の世界を実現しつつあることを知り、愕然とした。本書ではTVで紹介されたサイボーグ技術のほかにも、さらに進んだ脳と脳をダイレクトに結ぶコミュニケーションの実験なども紹介されており、とんでもない領域に科学技術が達していることを教えてくれる。ほかにも、人間の寿命や健康、記憶などに関わる最先端の成果が紹介されているのだが、注目すべきはこれらの研究は即ビジネスに直結する分野であるということだ。にわかに想像できないが、人間の寿命を延ばしたり、老化を遅らせることは、もう実用化への道筋が見えていて、企業が次々と参入しているという。私たちの未来はバラ色なのか、それとも人間としての堕落なのかーー技術と人間のかかわりについて深く考えさせられる刺激的な本である。
<br />ひとつ、本書の原題は「More Than Human」。素直に『人間を超えて』といった書名でも良かったのではないだろうか? 邦題のイメージとは異なり、本書はなかななか堅実な科学本なのだから。
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