27歳の時に失恋をきっかけに、人を好きになるということはどういうことなんだろうと悩んでいた時に読んだ本です。
<br />愛は技術である・・・読み出したときは、その言葉の意味が分かるような分からないような感覚でしたが、読みすすめる間に自分が相手を「好き」と思っている気持ちは、フロムが言う「愛すること」とは別ものであることに気づき、「好かれたい」だけの、自分勝手な恋愛に気づきました。
<br />「愛すること」・・・フロムが言うそれは、たぶんまだ私には理解できていないと思いますが、この本を読んでからは、少なくとも以前の恋愛のしかたとはあきらかに違う自分になったのは確かです。
<br />訳が堅く(と私は思います)文は読みにくいのですが、時間をかけ、じっくり考えながら愛について読み進めるには非常に良い本だと思います。
ユダヤ系ドイツ人、エーリッヒ・フロム1956年の著作
<br />[ The Art of Loving ]
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<br />「愛は技術である」と言い切る著者は、現代において一般に言われているところの「愛」なるものの多くが、実際にはケモノの次元の欲望であり、多くの人々が「愛」について語り「愛」を題材にした歌や映画などが無数に作られていながらも、人々は「いかに愛されるかと言う事については熱心であるが、自らを成熟させ愛する能力を身に付けていこうとする事こそが幸福へ至る道であると気付いた人は極めて稀であると指摘する。
<br />兄弟愛、母性愛、異性愛、自己愛、神への愛と言った様々な愛のかたちを取り上げた解りやすいメッセージになっている。
今さらながら「愛」について考えさせられる。
<br />もちろん、人を愛する、愛されるということとは別に「真の愛」とは何かということについて語られている。
<br />「愛」は我々が存在する以前からあり、人間だけのためのものではないことを思い知らされる。
<br />読み進むうちに、これは精神分析なのか、哲学なのか、最後の章では愛の習練の内容で締めくくられている。
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<br />「愛」そのものは形あるものではない、それだけに、個々に捉えられる「愛」は千差万別、そしてあらためて大切なものであることを教えてくれる。
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<br />何度でも読み返したくなる不思議な一冊である。