内容は題名の通りで、そのさまざまな方法が書かれており説明も丁寧。あらゆる本を一冊にまとめたようなお得感はある。ただ横文字が多すぎる。カタカナ表記を多用しすぎているために、元々の単語を知らない私などは読みづらくて仕方が無い。固い内容を固く固めて書いている本。
結論から言うと、良い本だと思う。あえて難を言うと、中身が詰まりすぎて、やや総花的な感じがするが、コストパフォーマンスも高い。
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<br /> 著者はいろいろな角度から組織活性化のための方策を提言しているが、その背景に共通して流れているのは、「上からの押し付けで進める改革は失敗する。各個人をいかに取組みに参加させるかが改革の成功のポイントである」ということである。
<br /> 総論では「組織は人なり」というけれども、実際の組織設計においては仕組みやシステムが先に来て、それに人が順応できるかどうかは後回しとなる。その結果、トップなりトップのブレーンが描く理想的な組織運営と現場の実態はいつの世も乖離したままである。
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<br /> 著者はその問題に対する具体的な解決策をいくつか提示してくれている。非常に具体的で良い提案であると思う。しかしながら、それらにも共通の弱点がある。
<br /> それぞれの解決策の成否は、それを運用する「人」にかかっているということだ。今は成功しても、同じスキームを別の人間で運用することになれば、同じように成功するかどうかはわからない。
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<br /> 著者は、これらの提案を通じて会社のカルチャーをじっくりと変えていこうとおっしゃりたいのだと思うが、道は険しそうだ。
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この作品においてカバーされる領域は極めて広い。
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<br />著者の経験も豊富なため、多様な事象について考察が及んでいるのだが、逆に考察止まりとなっているケースが多く、「ではどうすればよいか」というところまでストーリーが加速していかない。
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<br />たとえば、「外部環境の変化に対応するためには本質的な系の再構築である変革が必要」というメッセージに至るまでに、「変革と改善の違い」や「システムシンキングとロジカルシンキングの違い」にまで多くの文章を割いているため、結果として最も重要なメッセージが埋没している。
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<br />あるいは、「管理者がしっかりした認識を持って評価のプロセスをマネジメントできるなら、裁量の幅が大きい制度の方が上手く機能するようだ」というような記述は、経験に裏打ちされるまでもなく、ごく通常のこととして理解されるだろう。
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<br />このような「回り道」となる記述が多いために、結局のところ本題である「現場に変化のタネをまく」ためには何をしなければならないか、という主題が伝わりにくい。あらためて、必要なメッセージを抜き出さなければ、一貫したストーリーとしては把握しにくい。
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<br />せっかく様々な示唆をちりばめているのだから、読者に訴えるべきものをもう少しダイレクトに結晶化すべきだったのではないだろうか。
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