新書版でコンパクトにまとまっており、コスト・パフォーマンス的にもよいと思います。冒頭の、慶応ラグビー部への指導の模様や、統一体にするために、足の裏に体重を感じる方法など、判りやすいです。
<br /> ただ、筆者の小林信也氏の、師匠である宇城氏への思いが過剰すぎるように思います。「カツラーの秘密」では、小林氏は、カツラをつけた自分の日々の悩みやトラブルを、あまり自虐的になりすぎずユーモアを交えながら描いており、好感を持ったのですが、今作品では、ちょっと真面目すぎるというか、自分を責めすぎているようにも取れます。宇城氏に空手を学ぶきっかけとなったのが、エピローグで書いているように、家族との葛藤から、仕事を理由に家族を顧みなかった自分を見つめ直したことだったと素直に心情を吐露しているところは、共感もできる反面、思い入れが強すぎて少し悲痛でもあります。
<br /> もう少し、淡々としていてもよいかと思いますが、真の武術を貫き通す師匠・宇城氏と、それを広める一助となろうとしている小林氏との師弟コンビの、次なる作品に、期待したいと思います。
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著者がいかに現状のスポーツ界を憂えているか、それゆえに沖縄古伝空手の宇城師範に魅了されているかが、伝わってくる本です。
<br /> 著者自信は、前書にわかりにくいかもしれない旨を書いてますが、そんなことはなく、非常に明確でわかりやすい本となっています。読むだけならば、2時間あれば通読できますので、誰にでも手にとってもらってしかるべき本なのではないでしょうか。身体に興味を持っている方には、是非一読をお薦めします。
<br /> ただ、著者の宇城師範に対する感謝の情が、宇城師範その人を知らないと少し理解できないところがあるかもしれません。それが残念。
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最新作の『武術を活かす』で宇城氏に興味を持ち、正月休みを利用して宇城憲治氏の著作をいろいろ読んでみました。
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<br />著者である小林氏と監修者である宇城氏の出会いの頃のエピソードが第六章を中心に書かれています。そのなかで小林氏自身が気づいていなかった高慢、知ったかぶりといった癖を、時には激しく、時には時間をかけて、宇城氏が一枚一枚、丁寧に外していく様が非常に印象的でした。
<br />師匠を持つ大切さ、弟子と師匠という関係を深く考えさせられ、オイゲン・ヘリゲルの「日本の弓術」でのオイゲン・ヘリゲル氏と阿波研造氏のやりとりを思い出しました。
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<br />『試合に勝つ〜』とか『実戦〜』とか『すぐに使える〜』といった、いわゆるハウツーものの本があふれているなか、それ以前の基本中の基本について書かれている貴重な本と思います。特に伝統や歴史があるものを学ぼうとされている方、師について何かを学ぼうとされている方にお勧めです。
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<br />もちろん、身体脳/身体を一つにする/「型」の深さに学ぶ等々を体感するための様々な実例もイラストを添えて紹介されています(特にお箸の例が明確に身体の感じが変わるので是非試していただきたい)。しかし、武術・格闘技好きの方でビジュアルな情報を得たい方は、(本書がすべてイラストなのに対して)膨大な写真が掲載されている『武術を活かす』を買われる方がいいと思います。