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グーグル・アマゾン化する社会 ( 森 健 )

 著者自らが述べるように、いわゆる“グーグル本”ではない。ただ、リリースのタイミングから誤解もあろう。丁寧な情報収集と理路整然とした筋立てに定評のある著者が、この本で本当に伝えたかったことは何なのか。アーキテクチュアやシステマチックなインフラストラクチュアによって、我田引水的に、一つの田畑に、恣意的に最高の水が集まること。つまり、現代的な一極集中の様相を地図化して見せているのである。 <br /> 音楽のシングルヒットを例にすれば一極集中の話は分かりやすい。つまり、松田聖子伝説は超越されない、ということである。松田聖子の時代は、チャートアクションのソースもメディアも基本はシングルパッケージのみ、流通経路もそれほど複雑ではなく、また付帯する副次的サービスの数も多くはなかった。露出の最大のメディアはテレビの歌番組。そのような、一極集中せざるを得なかった70年代後期から90年代初頭までの日本の音楽産業は、勝つ者がいつも勝つ、まさに一極集中の牙城であった。だからこそ、アルバムはほぼすべてがベスト盤、アイドルが歌手よりセールスを獲得し、ワンヒットワンダーも多々生んで来た。一極集中して、周縁は浅かったのである。 <br /> 今音楽業界では、まさに逆転現象が起こっている。多極拡散である。一人勝ちのルールはある程度残しつつ、しかし流通経路、メディア、再生媒体、レーベル、クオリティ、すべてにおいて多岐/多様化し、ある意味ですべてのアーティストがワンヒットワンダーになってしまっている。今、アーティストでシングル5万枚売れるということは、一極集中時代の松田聖子のミリオンにも匹敵すると言って過言でない。 <br /> 本書で一極集中について考えれば、周縁が浅く、薄く、いつかは無化されていくことに気づくだろう。論理的法則によって音楽産業が一極集中から逆行したようなことが、あるいは他の生活世界に起こらないとも、言えなくはないだろうか。

 一極集中の根拠のひとつとして、近年の大ヒット作の数字を挙げているが、一番新しいもので 2001年の「千と千尋の神隠し」。 <br /> 宇多田ヒカルのCDアルバム「ファースト・ラブ」が860万枚売れたのが 1999年とあるが、この頃は今のような常時接続はほとんど無くダイアルアップがメインの時代で、google も今ほどメジャーではない。 <br /> それからネットが広く普及し google がメジャーになった今、ミリオンセラーの数は当時と比較してアルバムで 1/3、シングルでは 1/10 まで減っている。 <br /> <br /> 少なくとも音楽 CD の分野で 2000年以降に進んだのは一極集中ではなく分散化。 <br /> 答えを先に用意して、それに合う古いデータを無理やり持ってきたとしか思えない。 <br /> <br /> この時点で読む気がうせた。残りをパラパラとめくってみたが、底の浅い記述が随所に散見される。 <br /> <br /> この本を鵜呑みにするのはちょっと危ない。

こういうことを知っていた方が良いものかどうかは疑問である。なにか、昔の一部の特権階層なる人たちが秘密裏に使っていた帝王学的なものの暴露ではないか。インターネットにより、その使用者層が移り、一瞬垣間見えてしまったかの感じがする。一般人がこんなことをしったらやはり、ただ何か敗者のまま生きていかなければならないのかと思う。

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