統計データによって示される数値はただひとつであるが、解釈の仕方によってその意味は全く異なってくるというのが筆者の主張。
<br />また、統計データ自体(とくに加工度が高い場合)が、正しくないこともあるという。
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<br />この本を読んで、私たちは世の中に出回る数字をもっと慎重に解釈・吟味するべきだろうと思った。
統計数字を扱うことの難しさがよくわかる1冊です。
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<br />よく、因果関係と相関関係を混同して強引な論理展開をしている本や論文をみかけますが、この本を読めば、それらの多くが勘違いや間違いであることがよく分かります。また、経済効果についても、そもそもの数字がフィクションで、しかも誇張されやすい傾向があること、公式な統計であってもいろいろなバイアスがかかっていることなどが、ユーザーの立場にたって親切に書かれています。
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<br />統計を分析したり、統計をハンドリングしたりする人にとって、とても役に立つ1冊です。
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ニュースで現れる統計数字(平均○○、○○の経済効果は○億円 etc.)を鵜呑みにするのでなく、「この数字はどういう前提があってはじき出されたものか?」ということを分かり易く教えてくれる一冊です。例えば経済効果の話では「○○というイベントが起きたとき、それが誘引するプラス効果だけでなくマイナス効果も含めて総括しないと、実感に伴わない馬鹿デカイ数字しか出ませんょ」ということが良く分かります。平均にまつわる話として「豊かさ指標」の事例を読むと、目標管理制度(MBO)に基づく人事評価(変な加重平均)の持つ危うい側面も見えてきます。つまり、数字だけを見て判断するのでなく、その数字の出し方(「何が考慮されて、何が考慮されてないか? それらの間でどういう干渉(トレードオフ、フィードバック)があるか?」という複眼思考/システム思考)の重要性が具体例を通じて良く分かります。また、2つの数量の間の「相関関係」の見方についても具体例を通じて認識が深まります。
<br />(これらの思考法の入門書としては「知的複眼思考法」(苅谷 剛彦 著)、「システム・シンキング入門」(西村 行功 著)がオススメです)
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<br />しかし一方で、「地下経済の大きさ」のように、数字では見えないものを数字化する努力(見える化)も必要なわけです。そういうときは「シカゴにはピアノ調律師は何人いるか?」というような「フェルミ推定的な思考法」も必要になってくるわけです。(このような「数量化」の話題に関しては「数字オンチの諸君!」(パウロス 著)、「ザ・プロフィット」(スライウォツキー 著)が面白いかもしれません)
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<br />このように「数字に関する感受性」を高めるのに役立つ一冊でしょう。