芸術と芸(職人)の違いを判りやすく解説してくれる本。
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<br />その上で「芸術」とはいかなるものかを、すっと頭に落としてくれた。
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<br />「真の芸術とは自由なもの」
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<br />であり、そのためには自分も鑑賞だけではなく、
<br />製作者になるべきと岡本太郎さんは言う。
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<br />それは彼が芸術とは「生きるために必要なもの」と考えているから。
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<br />過去は貴族階級しか接し得なかった芸術も、
<br />今は庶民がいつでも接することが出来る状態にある。
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<br />岡本太郎さんの作品が常に
<br />「誰にでも見ることが出来る」
<br />ことをポリシーとしていたのも、芸術とは人々が生きるために必要なものだと考えていたからだとわかった。
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<br />この本を読むと、やっぱり何か描きたくなってしまう。たぶん、それは絵じゃなくてもいいのかも。何かを表現できれば。
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<br />50年前に書かれた本。でもこれが古いのか新しいのかは僕にはわからない。
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<br />ただ読んでいて楽しかった。
岡本さんのモーレツ的芸術論。
<br />既定の約束ごとを踏襲することを一切拒否する主張は、
<br />50年前においては危険思想だったようだ。
<br />日本人はとにかく約束ごとは大好きである。
<br />それは芸術にかかわらず、ビジネス上など社会全般においてもだ。
<br />前例があると安心するからだ。
<br />岡本氏の型にはまったスタイルを打破し、新しい驚きとインパクトを提示するという芸術論は、今読んでも楽しめ通用する。
<br />確かにただ綺麗な絵や像だけでは人は感動しない。
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時代を創造するものは誰か・・・まさに、自身の内面に行動の価値基準を有して、それを素直に発出できる人間である、ことを、彼の内なる言葉遣いで、論じている。渡部昇一の「人間らしさの構造」で説かれた、自己実現ある人の生き方を、芸術の世界で、全とうした作者の、発想の全てを体感することができる。今をさること30年前に、作者の講演を直に聴く機会に恵まれた者としては、そのときの内面からほとばしる言葉の数々とともに、一言一言の言霊つかいの勢いを感ずることのできる、銘著である。