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| クラシック名盤 この1枚
(
中野 雄
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この本の特色は、専門家以外の人たちが自分の経験を踏まえながら、「名盤」を語っているところである。音楽評論家となると、自己の経験と切り離して客観的な評論をしようとすることは、やむを得ないところではある。しかし、それだからこそつまらなくなる、とも言える。この本は、それぞれの人たちが、時には自己の過去を振り返りながら、「名盤」を紹介するものであり、彼らの肉声を聞いているかのような印象がある。面白いことは比類がないし、紹介されている名盤も他には見られないものも多い。音楽評論家である福島氏の文章からして、他の彼の類書と異なり、プライベートな要素が強くなって興味深い。こういう本こそ、待ち望んでいたものである。 専門家から一般人までさまざまな人たちが、クラシック音楽への愛情を吐露した楽しい名盤案内である。一般には入手しにくいレコードや古い録音もあるが、著者の情熱的な文章に思わず聴いてみたい!という衝動に駆られる。この手のガイドブックはたくさんあるが、こんなにおもしろいものは少ない。私の座右の書である。このコンパクトな本のなんと充実していることか。お薦めです。
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