評価の難しい本だ。
<br />社会の問題をえぐった珠玉のジャーナリズムか、単なる暴露本なのか、
<br />そのどちらの要素も持っている。
<br />星3つは、「平均的」と言う意味でなく、
<br />良いとも悪いとも言える苦しい評価だと思ってほしい。
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<br />実は私は富士通のグループ会社に社員として在籍していたことがある。
<br />その観点でこの本について述べると、
<br />1) 社員なら知っていること
<br />2) (作者のような)人事部に関わった人だけが知っていること
<br />の2つが書かれているが、
<br />少なくとも上記1) に関して間違ったことは書かれていない。
<br />上記2) に関して真偽を断定はできないが、
<br />「さもありならん」と納得いく記述が多かった。
<br />書かれたことは真実に近いのだろう。
<br />しかし真実が書かれているとは言っても、
<br />この本は評価できる点と疑問に思う点を併せ持つ。
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<br />まず評価できる点。
<br />この本は、真実を白日にさらした事により、
<br />富士通だけではなく日本の会社全体の問題として
<br />社員たちを苦しめる成果主義の問題点をあぶりだして、
<br />(多少なりとも)改善される方向に持っていったことだろう。
<br />経営者は、このような形で問題が顕在化するまで
<br />問題を問題として見ないことが多いのだから。
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<br />逆に疑問に思う点。
<br />真実とは言え、内部者しか知りえない会社の内情を
<br />退職した元社員が暴露することが、果たしてフェアといえるのだろうか。
<br />成果主義は問題の多い制度ではあるが、犯罪を犯しているわけではない。
<br />また、問題のある制度や社風を持っているのは
<br />富士通だけのことではない。
<br />この本によるイメージ低下で罪のない富士通社員が迷惑を蒙る一方で、
<br />暴露した作者が印税で儲けるのは、あまり納得のいけることではない。
最初に断っておかねば不公平になると思うので書くが、私は著者の同業他社の1中間管理職である。富士通は業界の中でも一番早く「成果主義」を導入した。1993年である。実は1980年代は日本の電機業界は景気が良く、アメリカを上回るものがあった(特に半導体)。ところが1990年代に入り、バブルの崩壊に時を合わせるようにアメリカが巻き返しに出て来た。このアメリカの方式に合わせようとして「成果主義」を導入する機運が日本でも高まったのである。先に述べたように業界では富士通が一番手である。その時は、「さすが富士通、動きが早い」とむしろ賞賛の声が大きかった。知っている方は知っていると思うが、あのマイクロソフトの社員は基本的に1年契約なのである。能力無き者は1年でクビになる。究極の成果主義だ。
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<br />しかし、本書を読むと富士通のパイオニアとしての苦しさが滲み出ている。管理者の評価の仕方が拙ければ職場・本人の士気は当然落ちる。また、会社の評価配分方針が秘かに決まっているようでは、システム自身が成り立たない。この時代に担当した東証のシステムが近年問題を起こしたとも言われている。
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<br />そして、富士通から遅れる事7年、私の会社にも「成果主義」が導入される事になった(!)。しかし、こう言っては富士通さんに失礼だが、"富士通の失敗"を活かした、やや緩い制度である。期の初めに「目標管理シート」というものを提出し、上司あるいは部下と面談し、その期の目標を決める。そして、期の最後には「目標管理シート(成果編)」を提出・面談し、その期の評価を決める。勿論、この評価の方法が拙ければ同じ失敗を繰り返す事になるが、私の見た所、富士通の評価より幅が狭いので、極端な差が出るような事はない日本的制度のような気がする。もっとも、やる気満々の人には不満が残る制度かもしれない。
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<br />本書は同業他社の評価方法を解説してくれた興味ある本であると共に、日本人に適した評価方法を考えさせてくれる良書。
光文社ペーパバックスで最初に読んだ1冊。
<br />ちょうど年度始めということもあり、昨年の成果と今年度の成果目標とか
<br />設定する時期ですね。。
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<br />うーむ、成果主義ってなんだろう?
<br />人が人を評価しちゃっていいの?
<br />成果の設定の仕方が崩壊したらシステムそのものがくずれる?
<br />成果主義のうまい運用の仕方ってないんだろうか?
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<br />漠然とおもっていた疑問にもこたえてくれた良書です。
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<br />成果主義が気になる方々にオススメです。
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