前作『誰か』はいまいち事件にインパクトが薄かったが、今回は連続毒物混入事件とあって、展開が劇的。真犯人も意外で、そこらへんはミステリーとして文句つけようがないなと思った。
<br />もうひとつ並行して発生する元バイト・原田ひとみの顛末については、絶対最後に何かしでかすという伏線が張られているので展開は読めるのだが、正直この女の存在は鬱陶しい。ついでに、ひとみの存在について散々警告されているのに流してしまった主人公も、なんだこいつみたいな歯がゆさが。
<br />もうひとつケチつけると、事件後の妻・菜穂子も読んでてイライラしてしまった。
<br />・・・とさんざんなことを書いてしまったが、内容としては『模倣犯』には及ばないものの、現代物ミステリーとしては十分面白い内容だった。ジャーナリスト・秋山と私立探偵・北見、それから萩原社長がいい味だしていた。秋山主人公のスピンオフ作品を書いてほしいな。
この作者の作品は何年か前にはまって読んだ事がある。丁寧に作り込んで完成したパズルの様な作品の出来に感動した記憶があるけど、この本は長い、長いわりに最後は無理から終わらせた感がすごい出ててあれで登場人物はそれぞれ納得のいく終わり方だったのだろうか。そして今回の主人公一家は後半腹が立ってきた。こんな脳天気な家族現実にあるか?僕達一家は毒なんてありませんよーみたいな。順風満帆で逆玉だから義父にはなんにもいいかえせないような男が謎を解いていく…探偵をやる?金持ちの道楽だよ。<br />
中盤あたりから、一気に読みすすめました。財閥企業で社内報の編集を仕事とする杉村三郎。きっとこの人、血液型はO型だろうなあ・・・不可解な行動をとるアルバイトで入ってきた女。あんな女が自分の近くにいたら、怖いですね。怖いけれど、彼女の行動は、あまりにも病的で、ありえないと思いつつ、興味津々で読んでしまいました。財閥企業の社長である義父や、私立探偵の北見が、地味ではあるけれども大きな存在感があってスキです。
<br />でも、なんだかんだ言っても、私は宮部作品の中では「模倣犯」が◎です。「名もなき毒」もきっと映画化されるのでしょうね。