オリジナリティを、ここまで既成概念と厳しく対峙させて維持しようとしている人間がほかにあるだろうか?サッチーの学歴詐称問題といい、森元首相の“家で寝ていて欲しい”発言といい、確かに私も単なる建前論を恰も自分のオリジナリティであるかのように錯覚し、嬉々として井戸端会議に参加していた。太田光の冷めた眼は、冒頭を飾る「ポコとジョン」に最もシンプルな形で現れている。愛犬の死という場面に直面し、「笑ってしまう」という行為は十分私にも有り得ることだが、あったとしても、私のザルのような意識(建前論と既成概念でできている)からはスルリと抜け落ち、決して記憶には残さないであろう。太田光は、事実を見落とす事なく、その時のありのままの自分の姿をくっきりと描いて、まったくためらいが無い。自分のリアクションに驚いてはいるものの、だからどうだという感想は無い。事実を事実として受け止めるとは、こういうことかと思った。そしてその積み重ねが、オリジナリティとなるのだろう。
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天下御免の向こう見ず、ヒレハレ草に比べてかなり人生論を書いています。その分、毛嫌いする人もいると思いますが、私はこの本でより一層太田光という男を尊敬するようになってしまいました。
<br />この本を読んだ後に元キリングセンスのハギさんの「ぼくは、これほどまで生きたかった」を読むと太田光の男らしさに泣いてしまうかも。
世間だけでなく自分自身も冷静に観察している。その冷静さの中に、温かさも垣間見える。<br>相変わらず、社会を独特の視点でとらえ直し、常識をバッサリと斬っていく・・・。続作を期待しています。