年に1度のお楽しみ、19世紀のイギリスはロウランド伯爵家を舞台に綴られる愛憎劇「あんだろ」の最新刊です。
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<br />端正な顔立ちの裏に潜む激情と不信をそのままに、ロウランドの新任家庭教師の「善良な仮面」を剥ぎ取ろうとあらゆる手段を尽くすロウランド家次男、
<br />端正な顔立ちの裏に怒りと猜疑を抱えながら、教え子のまとう「酷薄な仮面」の下にある善良さを信じようと足掻く家庭教師。
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<br />2巻から続く「春の賛歌」は執拗とも思える丁寧さで、お互いを暴き立てんがために
<br />二人がどす黒い熾火のように繰り広げる様々な対決を描く美しくもおどろおどろしいお話です(今のところ)。
<br />美麗なタッチで描き出される世界に漂う陰鬱で救いのない雰囲気は読み手を選ぶかもしれませんが、
<br />この対決からやがて見えてくるものは果たして何なのか。じっくりと見届けたいと思える物語です。
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<br />今巻も世界観を織りなすディティールの凝り方は健在。
<br />19世紀イギリスに浪漫を感じる方、暗めのお話が好きな方、是非とも1巻から物語を追ってみては。
赤毛の少年が主人公だった「冬の物語」も
<br />私にとってはかなり衝撃的でしたが、
<br />メガネ少年が主人公の今作「春の賛歌」は
<br />もっともっとダークで暗い、精神的にちょっと
<br />やられる感じの展開があり、それでも怖いもの見たさに
<br />似た感覚に襲われ、不思議な魔力(魅力)で
<br />読者を捕らえて離さない。凄いです、船戸先生。
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<br />3巻よりも更にドロ沼化しているレイチェルとウィルの関係が
<br />「一体この先どうなってしまうの!?」とハラハラさせると共に
<br />妙な妖しさに惹きつけられ、「長く続いて欲しいな〜」という
<br />アブナイ気持ちにさせられます(笑)
<br />「先生と生徒」という、ありがちな設定ではあるけれど、
<br />ヴィクトリア朝時代の雰囲気+船戸先生の漫画に
<br />取り込まれると、とても耽美で刺激的に見えますね。
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<br />毎回恒例のコミックス化に伴う加筆・修正ですが、
<br />今回の加筆はかなり大変な事になっております(笑)
<br />「スピカ」でリアルタイムに読んでおられる方は
<br />きっと驚かれる事でしょう。ぜひチェックしてほしいです。
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<br />ただ、最初に比べて段々と絵が雑になってる感じがします。
<br />絵を描く方にはありがちな事ですが、ちょっと残念・・・
<br />ということで星は4つにしました。
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読後、相変わらず黒い、もとい暗い話だなぁ、というのが印象に残る。
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<br />ストーリーは3巻から続く、新しく来た家庭教師と次男の絡みがメイン。それと平行してロウランド正妻の過去から正餐会が行われるまで。(作者公式サイトの関係もあり、ここでは名前で呼称しません)
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<br />しかしよくもここまで緻密に19世紀当時の事を描けるものだ、と素直に関心。身の回りのものから、「当時の」常識まで、まるでそこで過ごすかのような気分。
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<br />おまけ漫画『マーガレットさん』が復活してくれたので(3巻ではお休みだった)個人的には嬉しい。