この本に登場する論客は・・・
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<br />(1)宮代真司
<br />(2)神保哲生
<br />(3)東 浩紀
<br />(4)水越 伸
<br />(5)西垣通
<br />(6)池田信夫
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<br />このラインナップを見ると、ネットから遠い世界の住人であることはよくわかる。
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<br />そして、技術的なオハナシよりも社会学的なオハナシ、政治学的な、保守VS革新、ポストモダン・・・といったような内容であろうと感じ取れる。
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<br />そのとおりでした。
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<br />でもね、そんな議論を行っているのに、現実とのぶれは少ないのよ。
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<br />すごいよ、これ。
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<br />へんちくりんなビジネス書の100倍役に立つ。
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<br />で、そんな社会学の先生はこんなことをおっしゃっています。
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<br />ネット社会の未来像とは・・・
<br />@インターネットは必ずしも開かれた社会をもたらさない
<br />A真の自由競争は一握りの勝者と大量の敗者を産む
<br />Bネットの普及により、むしろ国家や権力の統制が晋可能性がある
<br />Cインターネットが自由な言論よりも社会の監視機能の強化に付与する可能性がある。
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<br />これを読んで、バカじゃないと思ったあなたがバカです。
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<br />そうなのよ、そのとおり。
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<br />SUICAと、mixiと、Overtureを逆の方から考えると、そのとおりだものね。
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<br />でもね、時代は動いてしまった。
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<br />戻ることはできない。
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<br />そして、どんなモノに対しても100%の善はない。
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<br />それを気づかせてくれた本書はすごいね。
videonews.comで2005年に流されたものの中から、IT関連ないしネット関連に絞ったテーマに加筆・訂正された、シリーズ第3段。
<br />子供を対象にした凶悪犯罪をめぐる監視社会の問題にはじまって、NHKの番組改変問題、TVとインターネット、ほりえもんの日本放送買収劇、Winnyと著作権の問題、小泉自民党の圧勝とメディア等々、ネット社会の未来像といいながら、ITを題材に2005年の日本を総括する内容となっている。
<br />各分野の専門家と宮台・神保両氏の掛け合いで、読み応えのある1冊に仕上がっている。
<br />本書を読んで興味を持った方は、videonews.comのほうも覗いてみるといい。
シリーズ第3弾は各界研究者を招いた鼎談形式だが、全体としてはやはり「ネット社会」に絡めた宮台理論の展開として読むべきだろう。
<br /> 第1章で東が、自分と宮台の違いを簡潔に説明している。東は「バカはどんどん増えるのだから、監視技術の導入はやむをえない」という立場で、この技術がライフスタイルを自由にする限りで許容するが、「問題は、それをどうコントロールするか」。対して宮台を「(バカを減らすために)さまざまなイデオロギーを再利用して、国民を啓蒙しようという立場」と規定し、だから環境管理型社会に違和感を抱くのだ、と(p23、他)。確かに宮台は「人間性」に拘っている(p263)。
<br /> ただしそれは単純な伝統回帰ではなく、伝統を機能的等価物で代替する「再帰的近代」の主張。しかも「一度ネオリベの極に振れることで大掃除」した上で「<生活世界>の実質を『再帰的に』取り戻す」段取りで、そこに末端の人々まで巻き込むべくサブカル等の周辺に「実存のモデル」を探すという戦略らしい(p315)。
<br /> 過剰流動的世界での「われわれ」のアモルフ化を防ぐため「相対的に非流動的な共通前提を確保しておくこと」(p185)が必要だが、宮台がそのために期待を寄せるのが「お茶の間にテレビのある生活」…『想像の共同体』ですかね。「そうしたホームベースがあってこそ、人は危険な外部に乗り出していける」(p161、p323)そうです。
<br /> 独りよがりな空理空論は相変わらずだが、しかし現実への処方箋と取るからアホくさいのであって、SF(Sociological Fiction)と思えば十分楽しめる。あるいは、社会科学的思考の『紋切型辞典』としては相当の水準。ただし、実権力を握ったらポル・ポトになりかねないので、読者の皆さんは要注意。