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| 寄る辺なき時代の希望―人は死ぬのになぜ生きるのか
(
田口 ランディ
)
前作『被爆のマリア』で「原爆」を題材に小説を書いた田口ランディが、さらに難しいテーマに真っ向から挑んだ入魂のレポートだ。
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<br />ある日、若い読者から届いたメールをきっかけに、彼女は「人間はいつか死ぬのに、生きる意味はあるのか?」という問いの答えを求めて旅に出る。認知症患者が入所するグループホーム。福祉先進国であるスウェーデン。北海道・浦河町で精神障害者たちが運営する「べてるの家」。チェルノブイリ原発事故によって地図から抹消された汚染地帯の村。有機水銀に汚染された水俣・不知火の海。ある意味、修羅場とも言える様々な現場を体験しながら、「命とは? 人間とは? 生きるとは?」と、答えを模索していく。
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<br />彼女は物事に対してつねに「わからない」というスタンスで接するのだが、この「わからない」ことに真正面から対峙しようとする姿勢が半端じゃない。わかろうと徹底的に考え続けるひたむきな姿は、胸を打つ。そして、考えれば考えるほど、彼女の物書きとしてのキャパシティがどんどん深く、大きくなっていくのを感じ、その変化には希望すら抱かされる。
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<br />彼女がたどる答え探しの旅は、なかなか終着点に至らない。しかし、タフでしたたかな彼女は、国や社会から不当な扱いを受けている人々の痛みに接したとき、自分の戸惑うありのままの姿をさらけ出し、痴呆の老人たちが人間という着ぐるみを脱ぎ捨てて命そのものになって輝く姿を見ては感動する。そんな彼女の生きざま自体が、実は生きる希望なんじゃないかと感じる。
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<br />引きこもりの兄を餓死で亡くし、脳梗塞で植物状態に陥った母を看取り、酒乱の父を持つ彼女が、自らの意志によってなおかつ絶望の淵に立つなかで、そこから湧き上がってくる希望こそが、答えに至るきざはしではないかと思うのです。
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何をするべきか、何が正しくて何が悪いのか、
<br />常に他人に何かを決めてほしがる日本人。
<br />そのなかにポタリと落とされた、問いかけのゼンマイがぎゅうぎゅうに巻かれた本。
<br />もっとわからなくさせて、頭を混乱させて、妙な気分にさせればいい。
<br />読み手の過去と未来を撹拌しながら新鮮な空気を入れてくれる。
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