著者は青色発光ダイオードの中村裁判など数々の大きな裁判に20代のうちから携わっている弁護士によるものである。
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<br />本書では日本人の美徳とされる「阿吽の呼吸」や「以心伝心」などのような日本人特有の非論理(前論理)的な考えをビジネスや交渉事に使うことに対して否定的に述べられている。
<br />また、論理的思考を支える冷静さを如何にして保つかや、論理的思考をどのように活かすか(伝えるか)にも重点を置き、著者の経験を通して描かれている。
<br />これは著者が弁護士と言う職業柄、自分よりも年配の人が年下のものに対して抱く感情として論理的には納得できるけれども、共感は出来ないという事態を実践的に避けてきた経験に由るものだと思われる。
<br />文章自体は読みやすく、交渉事における論理も納得させられるものが多い。
<br />ただ、著者の考えどおりいくと交渉は上手くいくようだが、人生を通して考えるとそうすべきなのかが疑問に思えてくるところはある。もう少しなあなあで生きていってはどうかと。
TBSテレビの人気番組「情熱大陸」にも登場した荒井裕樹さんは、
<br />これからは地位や年齢とは関係なく、強い『論理力』を持った人間が
<br />『個人』として生き残るようになる、と本書の中で述べています。
<br />論理的交渉力を高める7つの掟は必見です。
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本のタイトルは出版社が決めるそうですが、本書はその典型例ですね。
<br /> 著者自身が「決して理屈で物事すべてを解決しようとしているわけではない」と書いている通り、
<br /> 「論理力でコントロールできること」
<br />と
<br /> 「論理力でコントロールできないこと」
<br />をきちんと峻別することが大切であることを前提にしています。
<br /> 「論理力」というよりは「交渉力」について書かれた本でした。
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<br /> 著者がこんなに「論理、論理」と言うようになった原因の一つは、家庭環境です。著者の父親も弁護士で、著者が何かを買ってもらおうとすると、必ず理由を明らかにしなければ応じてくれませんでした。
<br /> 遊びのために使うお金を渋るのは分からないでもありませんが、父親は徹底しています。息子が大学受験のために通信教育を始めたいと言い出しても、なぜ大学合格のためにその通信講座を受けなければないのか、どのような効果が期待されるのか、合理的に説明せよ、というのです。
<br /> 気の弱い息子でしたら諦めそうなものですが、著者は違います。意志の強そうな表紙の写真でも分かる通り、親を納得させるまで理屈をひねり出して粘るのです。
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<br /> 今でも、常に論理的に物を考えるように努めています。エレベータに乗るときは、少しでも時間を節約するために、行き先ボタンを押す前に「閉」ボタンを押す、というノウハウも惜しげなく披露していますよ。
<br /> そこまでしなくてもねぇ、と思ったあなた!
<br /> そんなことでは、「プロの論理力!」を身につけることはできませんよ。
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<br /> 著者が本書を執筆した動機は、印税を期待したからではありません。
<br /> 著者の言葉によれば、
<br /> 「『個人の力』で勝負する『個人の時代』の到来を、
<br /> より近くに引き込みたいから」
<br />とのこと。
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<br /> いやはや。疲れを知らない著者でした。
<br /> やはり、私は付いていけそうもありません。
<br /> 「プロの論理力!」の道は険しいなぁ。