下山事件だけではなく、むしろ 数々の裏と表の人間たちの
<br />物語の始まりとして この本を読ませていただいた。
<br />実に面白く またこの時期にまだ 幼い私の叔父は 栄養失調でなくなったわけだが
<br />実に 腹立たしい物語であります。
ノンフィクションなので事件をさまざまな角度から検証している部分と、一方で、自らの家族の本当の姿を探そうとしている部分とがクロスし、2重にも3重にも楽しめる内容。
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<br />自分自身下山事件にたいしては深い知識がないのだけれども、雑誌のレビューで読んでみようと思った。
<br />実際読んでみると、当時の社会状況や日本の政治的な立場も、端的に説明がなされているので内容の理解には困らない。
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<br />若干、作者自身の我が出すぎていて、「この部分は思い込みではないか」と思えなくもない節が見えたのが残念。もっとも、思い込みかどうかなど確かめる術はないのだが。
別の書評で、「下山事件の決定版はこれ」と推薦されていたので読んでみた。
<br />本書は、戦後史の謎のひとつである下山事件について、関係者の肉親(孫)がペンを執ったものだ。執筆の動機は、「祖父は何者だっだろう」だ。著者にとっては、祖父や自分の一族の戦後と下山事件が重なって存在していたのだ。
<br />一族に覆い被さるタブーの存在。著者が取材を進めると、おじおばが反応する。著者の一族は下山事件を風化させようと皆で封印してきたのだ。
<br />そこに著者が問いを発する。「あの頃何があったのか?」と。拒絶、重い口を開く者。各人各様の反応が生々しい。本書は下山事件の謎解きであると同時に家族の探索のストーリーである。そこが本書の魅力である。(ギルモアの「心臓を貫かれて」に似ています)
<br />後半、事件の核心に迫っていくのだが、取材によって明らかになった事実と推測を組み合わせた結論は、凡そ真相に近いのだろうと思われた。事件発生の背景・手順等、納得感のある丁寧な組み立てだ。いい本です。もう少し内容を絞り込んだら満点でした。