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悪行の聖者 聖徳太子 ( 篠崎 紘一 )

この著者の一連の作品は、われわれにあまり馴染みのない古代を舞台としています。今回の作品は、前作の卑弥呼の時代から数世紀経過したヤマトの国が舞台です。しかし、まだまだ社会の規模は小さく、天皇一族も地域社会の名士といった程度の存在でした。 <br />そういう時代に生まれた聖徳太子(厩戸皇子)ですが、同時に10人の話しを聞くことのできる能力を持つスーパーマン。叔母でもある推古天皇の摂政として、冠位十二階、十七条憲法と次々に国家の基盤を作り上げていきました。また、法隆寺を建立し、仏教の布教に力を尽くした偉大な人物としても知られています。しかし、それだけの業績があり、かつ、天皇の血筋を引いていながらも、皇太子のまま生涯を終えているのです。何故でしょうか?この小説はその疑問に正面から取り組み、新たな衝撃の解釈を示した物です。 <br />しかし、この小説の素晴らしさはそういう新解釈の衝撃によるものだけではありません。なにより、小説の中の人物達が、生身の人間として命を吹き込まれているのです。まだ、神や自然が人と共に在った時代の物語でもあります。主人公厩戸の少年時代の大事件、弟である来目との絆、妻や子との生活、そして、なによりも父、母、そして推古天皇との関わりなどなど、ページを繰る手ももどかしく、一気に読み終えてしまいました。 <br />我が国、最古の歴史書である「日本書紀」「古事記」の執筆よりも一世紀以上前の時代の物語です。古代史にはまだまだ沢山の謎と、そしてロマンが秘められているのだろうと考えてしまいました。 <br />小説好き、ミステリー好きには、おすすめの1冊です。

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悪行の聖者 聖徳太子
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