警察小説というと捜査第一課の刑事が殺人事件を追うみたいなイメージがあったのですが、
<br />この短編集の主人公たちは、交通課の制服警官だったり、
<br />あるいは生活安全課や会計課に勤務しているおまわりさんたちです。
<br />それぞれの現場の視点から事件にかかわり、意外な真相を暴いていく過程が面白く、一気に読みました。
<br />事件とかかわる中で主人公自身が自分の人生に向かいあうストーリーは
<br />読んでいてある種のカタルシスが味わえます。
<br />
<br />個人的には、「又聞き」が好きです。
<br />主人公は幼いころに海で溺れ、助けてくれた大学生が水死してしまったという過去を持っています。
<br />鬱屈した意識を抱えて成長した彼は鑑識課の刑事となり、その職業眼で事件の隠された背景を突き止めるのですが
<br />主人公の心の変化や、死んだ大学生の母親の心情など、くどくどと説明されていないのに痛切に伝わってきて
<br />さすが短編の名手だと改めて思いました。
<br />
<br />長編も良いけれど、短編小説には短編小説ならではの面白さというものがある・・・と感じられる1冊だと思います
郊外の敷地に、庁舎、署長・次長官舎、署員宿舎、独身寮のすべてが揃って並ぶ三ツ鐘警察署。職住一体の息苦しさから「三ツ鐘村」と揶揄され、赴任先として嫌われるこの所轄署を舞台にした七篇が収められている。
<br />
<br />私事だが、警察の署員宿舎の近くに住んでいたことがある。「三ツ鐘村」ほどではないにせよ、洗濯物の干し方、自転車の並べ方ひとつにも気を遣うような雰囲気があったのを覚えている。しかしこの短篇集は、そうした息苦しい特殊な環境のみに題材を求めることなく、その設定を時折ぴりりと効かせつつ、多彩な物語展開で楽しませてくれる。著者の他の短編より緊迫感が抑え気味で、派手さもないが、その分、肩の力を抜いて読める一冊だと思う。
<br />
<br />ほろ苦さを含みつつも、それぞれに異なる読後感を残すことも印象深い。読む人によって、「好きな一篇」が分かれそうだ。
<br />
一つ一つの物語が厳しい警察社会を描いていて、どれも思いがけない展開が待っている。長編として描かれていても一つ一つ楽しめるのではないかなと思った。<br>変にぐだぐだ長くなくて中身びっしりという、深追いの構成はさすがと感じたし、訳ありもは思わず苦笑いといった感じだった。逆に又聞き、締め出しなどは続きを読んでみたいなとも感じた。<br>短編なのですごく読みやすかったです。