2002年に福岡県北九州市で起きた少女監禁事件から発覚した,密室での連続殺人事件について,直木作家の佐木氏がまとめた.
<br /> 大の大人が何人も揃っていて何故抵抗しなかったのか?何故逃げ出さなかったのか?しかも,何故結果的に身内どうして殺し合い,死体を解体して跡形もなく「処理」してしまったのか?いくつもの「何故?」が並んで仕方がない事件.中でも,死体を切り刻み,ミキサーを使ったり鍋で煮たりする様子の描写は,まともに読み進めるのが難しい.
<br /> このような状態に陥った「何故?」について,著者は「恐怖による支配」という言葉で説明している.そして主犯の男とオウム真理教の首謀者の男との共通点を見出している.
<br /> 「恐怖による支配」とひと言で言われても,私たちがとても実感できるものではない.しかし,昨今発覚した監禁事件やカルト教による事件を耳にするに当たって,そういうものが本当にあるのかもしれないなと感じられる.そして平凡な家族が,猟奇を超えるような殺人に手を貸したという事実がその何よりの証拠と言えるのかもしれない.
ワイドショーなどで最初はワーワーと報道されていたので、事件のさわりの部分は知ってる方は多いと思う。ところがそのあとの報道は段々と尻すぼみになり、結局何がなんだかわからない事件のままになってた。私もそのひとり。
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<br />本書は筆者が裁判所に通いつめ事件の全体像をわかりやすくまとめたルポルタージュ。
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<br />「7人連続殺人」という大事件だったとは!
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<br />ワイドショーでは理解しかねた、わけのわからない人間関係がすっきりわかりやすいように解説されています。
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<br />自分の手はまったく血に染めず、内縁の妻の親族を6人を互いに殺させ、同居していた少女の父親を殺させた、主犯男性の狡猾さに唖然。こういうのも才能なのでは。。。。と変な気分にさせられます。
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古今東西の犯罪史でもここまで残酷・無慈悲な事件を私は知らない。
<br />しかもそれが日本で起こったとは。
<br />家族を殺し合わせ死体を処理させる超異常事件。
<br />主犯の松永太とは何ものなんだ!
<br />どう生まれ、どういう環境で育ったのか? 家族や友人は?
<br />本書で最も気になったのは、この一点である。
<br />この点が本書では突っ込みが不足で見えなかった。
<br />根源を追求しないと闇は永遠の闇だ。
<br />第2の松永太は間違いなく存在する。
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<br />しかし本書の衝撃は大きく重い。
<br />人間、良い人もいれば悪い人もいるが、そんな次元を遥かに超えたはかり知れない極悪人も確実に存在する真実を本書は示した。
<br />ただ松永の根源的な掘り下げが足らないので、次回を佐木氏に期待したいです。
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