本書は英語論文を書くために必要な表現が数多く紹介されていることはいうまでもない。それ以上に、本書を読むことによって、いかに誤解のない論文を書くことの大切さを実感する。(よって、修辞的な言い回しなどは本書の対象ではない) 多くの学生は本書から自分の日本語思考の論文の「曖昧さ」や「誤解の種」に気づくかも知れない。そこでは「理解してもらう」のではなく、「理解させる」という姿勢が求められているのである。<p>その他、コラムや巻末に紹介される様々な英語論文での表記ルールなどは有益である。もちろんシカゴマニュアル等でこの手の知識は得られるが、学生にとって日本語での解説はありがたい。<p>とにかく英語で論文を書くということで、日本人は文書の厳密さ、明瞭さ、論理を学ぶことができる。日本語がそれらを欠いているということを言うつもりはないが、能動的(積極的)な表現とロジックをもつ英語論文の手法を学ぶことによって、より自分が「何がいいたいか」ということもはっきりしてくると思います。
私の研究室では,英文表現の事例集としてではなく,先行研究の批判や発展とか,自分の研究をまとめ,発展させる際の言葉遣い,すなわち発想法(発想の手段ぐらい?)を学ばせる,(言語化して)意識化させるための教科書として使っていました.ときどきぱらぱらとめくっていると,「あー,こういう批判方法,表現もあるわな」と気付くことあります.買って損はしないどころか,得する.
論文のタイトルから、本文によくある表現まで、文例が豊富。論をすすめたり、反駁したり、力量不足を認めたり、先行研究を概観したり、と、ほんとうにさまざまな場面での英文と訳が収録されている。さらに、表現だけでなく、論文を書く上での注意点や心構え等もまとめられ、英語論文を書く人にとって全般的なガイドになるだろう。ただ、「英語論文」といっても、共通点は「英語で書く」ということだけである。つまり、書く内容は文学から自然科学まで人それぞれであり、扱う分野によってスタイルや文章も変わってくる。全体的な指針は得られるが、所謂「かゆい所に手が届く」ものではない。この本に加えて、自分の分野における英語論文に関するガイドも持っておいたほうが便利。