ライブドア監査人が反省の意を込めて、当時の状況を語る告白本。関係者の生々しい発言についての記述はおもしろいが、全体としては「監査業務の限界」を理由にした言い訳本に過ぎないような印象を受けた。
<br /> ライブドア元経営陣に対する容疑事実については検察のシナリオに則った記述となっているが、@ホリエモンの関与度合いA容疑事実となっている取引についての分析についての切り込みは薄い。
NHKのクローズアップ現代「ストップTHE粉飾決算」で登場した元会計士が書いた本らしいが、NHKの番組を見た後の感想と同じ疑問が出てくる本だった。
<br />
<br />まず第一に、何故元会計士なのかよくわからない。ライブドアの「粉飾決算」に主任会計士として承認のサインしたから会計士の資格を剥奪されたのだろうか。それなら、後進の為の教訓の意味はあるかもしれない。
<br />
<br />しかし、自主的に会計士としての活動をやめているだけなら、たんなる自己弁護、自己保身のため、「家族」のために仲間(小林、久野両会計士)及びクライアント(ライブドア)を裏切った男の自己弁護の為の書物でしかない。
<br />
<br />また、「投資事業組合を解散しなければ監査を降ります」とライブドアに迫ったそうだが、肝心の「投資事業組合」の内容について、筆者自身、「監査人の立場からはいくつかの投資組合を通して行った取引の詳細はわからなかった」と書いている。しかし、どういう根拠かわからないが「投資事業組合が自社株売買の隠れ蓑」になっていたと書いている。わからなかったものをどうして「隠れ蓑」であったと言い切れるのか不思議だ。投資事業組合にライブドア以外の第三者が運用し、例えばそれがスイスのプライベートバンクであれば、別に運用の中心をライブドア株式にしていたとしても何ら問題はないはずだ。
<br />
<br />総じて、この「告白」は、ライブドア及び堀江被告は「粉飾決算」をしてまで株価を高くしたかった「悪い奴」であることを印象付けようと書いた書物に思える。もし仮に著者が検察から、「まだ若いのだし、真面目に反省し、ライブドアの悪事を世間に知らしめれば、会計士の資格は剥奪されることはないし、逮捕も免れる」といわれ、一種の「司法取引」として書いた本ではないかとの疑問が残る。
<br />
<br />
<br />
便乗本かと思ってしばらく読まなかったが、内容はまともだった。反省の意味も混めて星5つ。自己弁護の面は否めないながらも、この本で名前を売ったところで知れているだろうし、リスクの方がよっぽど高い。にもかかわらず本書を書き下ろした勇気をまず称えたい。
<br />
<br />内容的にも暴露本のような形ではなく、会計士の業務内容、経営陣とのやり取りが良く分かると同時に、何よりもビジネスエシックスについて深く考えさせられる。今後、企業経営陣の参考書たる存在ではなかろうか